
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する新連載「中村アーカイブ」がスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第2弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.2 / ブルックス ブラザーズのタッセルローファー

「今日は、1987年くらいに購入したブルックス ブラザーズのタッセルローファーを紹介したいと思います。数多くのインポートブランドのタッセルローファーを履いてきましたが、これが初めて購入したタッセルでした。
当時ブルックス ブラザースと言えば、コードバンのアンラインドのローファーが有名でしたが、実はアメリカではこのタッセルローファーが非常にポピュラーな靴だと私が所有している1988年のカタログにも載っています。
このブルックスのタッセルは、実は当時オールデンで作られていたのは有名な話です。オールデンとの違いはヒールに入っているフォクシングステッチで、それ以外はデザインもラストも同じだと言われています。オールデンのタッセルは、カーフでも当時4万円台の後半でしたので、入社2年目の自分にとってはなかなか買えるものではありませんでしたが、このブルックスのタッセルは、何故か運よくセールで半額くらいで購入することができました。
当時はデニムと合わせたりタータンチェックのパンツと合わせたり、かなりヘビーローテーションで履いていました。その後ブラックカーフやエビ茶といわれるオレンジっぽい色のオールデンのタッセルを購入して、20代から30代の頃は本当に良く履いていました。
その後、’90年代初めにオールデンのファクトリーに初めて行った時に『一番オールデンらしい靴はタッセルローファーだ』とオールデンの社長から直接聞き、とても感慨深い思い出があります。この靴は、自分がタッセル好きになったルーツの靴と言えます」