
「スーパースターは沸点が違う 血をバッと沸騰させる力が桁外れ」
(丸山さん)
北島 僕は毎年新記録を出していたように思われているみたいですが、実際は体が言うことを聞かないときが多かった。ただ、それを何クソ!とパワーに換えていましたね。
丸山 わかる。スーパースターってどこか同じ匂いがするんだよね。血をバッと沸騰させる力が強くて、その瞬間がわかっている。だからこそ、ちょっとした違和感にも気づいて、調子が悪いことだらけのように感じたりする。タイガー・ウッズの集中力が高まってゾーンに入ったときもそうだけど、沸点が違うんですよ。
北島 それはテレビの画面越しでも伝わります。
丸山 まるで機関車みたいに、自分の中に石炭突っ込んでるのが見えるの。そんなとき解説者としては「いい雰囲気になってきましたね~」ってコマセを撒く(笑)。
北島 確かにその人のプレーを数え切れないほど見たり、一緒にラウンドしたりしていれば、その空気感はきっとわかると思う。
丸山 プレッシャーに打ち勝っている選手は、必ずパンパン芯を食うんですよ。それをテレビの前の皆さんにお伝えするのが解説の仕事。お茶の間で僕とゴルフ観戦したら、きっと面白いですよ(笑)。
北島 東京五輪が待ち遠しいです。
丸山 康ちゃんは、もはやスポーツジャーナリスト的な立場だよね。
北島 水泳に関していえば、後輩のがんばりに期待していますし、バルセロナ五輪で競泳史上最年少の金メダリストになった岩崎恭子さんのような、スターが出てくるかもしれないし。
カピバラ、ワニ、フクロウ! 野生の王国リオに続く東京は?
丸山 今後、スポーツのファン層を拡大するためには、どんなことが必要だと思いますか?
北島 格好良さで魅了したり、悔しいときには涙したり、多くの人と感動を共有できるのがスポーツのすばらしさ。今はゴルフやラグビー、柔道もそうですが、日本のスポーツ全体が強くなってきている。この追い風のなかで、丸山さんと楽しく気持ちよくスポーツの醍醐味を伝えていけたらと思っています。
丸山 スポーツ界があったまっている雰囲気は、ZOZOチャンピオンシップで僕も感じた。世界のトッププレイヤーが集結したときの観客の熱量を、東京五輪まで持っていくことを考えたいと思います。
北島 子どもたちに夢を見せたいですね。僕が子どものころ、当時日本一強かった水泳選手が五輪の予選をトップ通過して、一番いいポジションのセンターコースで決勝に臨むのを観たんです。でも4番だった。それでもカッケー!と興奮した。感動を届けるのはメダリストだけじゃない。そこに五輪の良さがあると思います。
丸山 オリンピアン、憧れます。
北島 プロスポーツ選手にそう言っていただけると、アマチュアスポーツ選手としてはすごく嬉しい。だからこそ僕らは率先して、東京五輪を盛り上げていきたいですね。
丸山 日の丸を背負う喜びもあるよね。日本の代表になるっていう。僕も東京五輪に出場したかったな。あと15歳若かったら……。
北島 前回のリオ五輪で、丸山さんと一緒にゴルフを観戦させていただいたとき格好よかったですよ。「監督ーっ!」って皆から慕われて。
丸山 カピバラの写真ばかり撮ってたけどね(笑)。あの会場には、いろんな動物が棲み着いていたよね。フクロウやワニもいて、まるで動物園。
北島 東京五輪のゴルフ会場、霞ヶ関カンツリー倶楽部には何かいますか?
丸山 きっと勝利の女神が棲んでいると思うよ(笑)。
[MEN’S EX 2020年3月号の記事を再構成]
撮影/筒井義昭 スタイリング/松純〈丸山さん〉、櫻井賢之〈北島さん〉 ヘアメイク/多田亜樹博〈北島さん〉 文/間中美希子