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スキンステッチが象徴する
戦う男が時代を超えて愛する靴

一切の装飾を排したプレーントゥの外羽根は1815年のワーテルローの戦いで活躍したゲプハルト・レベレヒト・フォン・ブリュッヘル氏によって考案された軍靴用ブーツがそのルーツと言われており、彼のファミリーネームを英語読みしたブルーチャーの名が付いた(現在は外羽根の靴を総称するネーミングになっている)。

プレーントゥの名作と言えばオールデンの9901かチャーチのシャノンがまず思い浮かぶが、歴史に倣うならば、チャーチに軍配が上がる。映画『007/慰めの報酬』でジェームズ・ボンドも着用したその靴は、戦う男にふさわしいスペックを備える。

肉厚な革を三層重ねたトリプルソール、その厚みを物ともしない頑強無比なグッドイヤーウェルト製法、アウトソールをそのまま打ち抜いたオープンチャネル、甲の立ち上がりへの雨水や埃の侵入を防ぐストームウェルト……以上のスペックを従えるに足るボリューミーな103ラスト、そして、ポリッシュドバインダーカーフ。

かつてブックバインダーカーフと呼ばれたその革はカーフ表面に樹脂加工を施しており、艶やかな光沢と傷や汚れが付きにくい性質を有する。構造上はガラスレザーと呼ばれるジャンルに属するが、どこかのっぺりしていて、履いているうちにひび割れが発生する巷ちまたのガラスレザーとはまるで趣が異なる。勝因は厳選された上質なカーフと、独自に編み出した樹脂加工技術にある。そもそも樹脂を塗布する革にカーフを使うこと自体稀だが、シャノンはおろしたての彩度をいつまでも保ち、履き込めばそのツヤに深みを与える重厚なシワを刻む。

レースステイ周縁に施されたスキンステッチは装飾のためにあるのではない。補強から生まれた、タフな物作りを象徴する意匠なのだ。

1873年に創業したチャーチはその3年後に左右別の木型(それまでの木型は左右同型だった)、ハーフピッチという世界初となるスタイルを創造して英国既製靴の父と称された。ポリッシュドバインダーカーフは進取の気性に富んだ老舗だからたどり着けた革なのである。

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―INDEX―
ChapterⅠ 頻度に応じた靴磨き
おろしたての靴磨き/履き終わりの靴磨き/週に1度の靴磨き/月に1度の靴磨き/半年に1度の靴磨き
ChapterⅡ 短時間でできる靴磨き
1分で光らせる/5分でツヤを出す/30分で鏡面磨きを完成させる
ChapterⅢ 上級者向けの磨きを極める
立体感を出す磨きを極める/アンティーク磨きを極める
ChapterⅣ トラブル対策
キズ編/カビ編/塩吹き編/クレーター編/シミ編
ChapterⅤ 磨きがいのある デザイン別 究極の靴カタログ10選

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