バイヤーとして忙しい毎日を過ごす
この頃、坂戸さんは販売職での仕事ぶりを認められてアシスタントバイヤーに昇格。オリジナル製品の企画や生地選びで忙しい日々を送ることになる。
ドゥエボットーニやワンピースカラーのシャツ、レザースニーカー、赤いパンツなど、さまざまヒット商品がたくさん登場した。

ほどなくしてアシスタントからすぐにバイヤーに昇格した坂戸さんは、イタリア製品の仕事を専門にしたいとの思いから、29歳のときにシップスを退社する。次に入社したのはイタリアブランド専門の輸入商社。イタリア人との仕事が日常となったことで、国民性を深く理解できたほか、イタリア語も話せるようになった
エル.アイ.エスを設立
5〜6年ほど経過した頃、取り扱っていたブランドの一つ、ギ ローバーと一緒に会社を作ることになり、商社を退職。それが2007年のこと。新たに設立されたのが、現在のエル.アイ.エスである。

途中で本国のオーナーが変わるトラブルにも見舞われたが、すぐに事態は好転。取り扱いブランドは増えていき、2009年にイレブンティ、2010年にドルモア、続いてエルネストと、次々に人気ブランドの日本展開を手掛けることになった。
現在の成功の秘訣を聞いてみたところ、「バイヤーと販売員の経験が生きています」と坂戸さんはいう。顧客の声を実際に聞いただけでなく、海外のブランドや工場といかに付き合っていくかも知っているからこそ、魅力のある製品が生まれるのだろう。
一方、坂戸さんと対面して朗らかな人柄が多くの人を魅了していることもわかる。接客にしても、商談にしても、この雰囲気で対話をすれば「一肌脱ごうか」なんて気にさせられてしまうに違いない。
「自社の洋服で全身をコーディネイトしてもらえるように、アイテムを充実させたいと思っています。よりよいものを提供するためにイタリアでモノづくりから関わって、みなさんに提供するのが信条です」と語る坂戸さんが、つぎにどんな魅力的なブランドを探し出してくるのかが、いまから楽しみだ。

撮影/久保田彩子 取材・文/川田剛史