ファッションディレクター森岡弘さんが読みとく「スーツの世相」とは?【最新スーツ座談会】

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スーツスタイルを仕事に、人生にどう活かすかは、一人一人の働き方や自己プロデュースのあり方によって大きく違う。スーツスタイルに”普遍”はあれど、スーツの選び方に絶対の正解はないのだ。着る人を魅力的な人物に見せる服=スーツを、アナタの”これから”にどう、上手に役立てるか?ここではその術を様々な目線から、明らかにしていこう。

スーツに求めるものを的確にし、自己プレゼンにつなげて欲しいですね(森岡さん)

通勤スニーカーは多様に進化
通勤スニーカーは多様に進化していますね(森岡さん) これなんかほとんどドレス靴です(金森) 


スーツを正せば、仕事でも勝てる!

森岡 ところで、僕はいわゆるエグゼクティブのパーソナルスタイリングを行うことも多いのですが、ビジネスツールとしてのスーツの必要性を、最近特に感じるようになりました。

金森 どういう意味ですか?

森岡 装いによって、自身のイメージ戦略をきちんと立てるということです。自分の職業や、演出したいイメージに相応しいスーツをしっかり着こなせるということは、今や一流のビジネスマンにとって欠かせないビジネススキルのひとつだと考えています。

金森 今回の受賞者である甲斐さんからも、ちょうどそんなお話がありましたよね。タイドアップが主流ではない資金調達のプレゼンに、あえてスーツで臨んだと仰っていて(P52参照)。僕はそれも、プレゼンで勝つための立派な戦略だと思うんです。

森岡 素晴らしいですね。でも、現実にはまだまだ立場のある人が、役職に相応しい装いをしていないケースは多いなと感じます。そもそも、スーツスタイルそのものへの意識が不十分な方も少なくないですからね。

中村 ビームスでは、ネイビースーツが一番よく売れます。これはスーツスタイルに詳しい人なら当たり前のように聞こえますが、街を見ると大多数の人は黒いスーツを着て仕事をしていますよね。これって、国際的に見ると相当に不思議な光景で、ビジネスで黒いスーツを着るのは日本人とドイツ人だけだ、とよく言われます。

森岡 スーツは男の一番の格上げ服ですから。本当はNGだという意識を持って着こなしてほしいですよね。

金森 同感です。スーツほど万人に好印象を与えられる服はありませんから。

中村 僕もスーツを着ていると、ファッション業界以外の方からも「格好いいですね」と褒められますよ。ドレスクロージングに全然詳しくない人でも、しっかりスーツを着こなしている人は何となく違うな、と分かってくれるみたいです。

森岡 僕はパーソナルスタイリングをするとき、まずは求める印象を聞くようにしています。信頼感なのか、親しみやすさなのか、知性なのか。それによって相応しいスーツ選びは変わってきますからね。

山浦 なるほど。

森岡 さらに言うなら、“グレーゾーン”を上手に活用できると最高ですね。

金森 グレーゾーン?

森岡 仕事着としてアリかナシかの境界線付近にある装いです。例えば受賞者である澤田社長は、あえてブラウンスーツを選んでおられたでしょう?(下写真参照) 手堅いのは紺かグレーですが、あえてこの色を選ぶことで、ご本人をより魅力的に見せています。

金森 なるほど、さすがですね。ちなみに皆さんは、最近の新たなグレーゾーンであるところのスニーカー通勤には、どんなご意見をお持ちでしょう?

中村 “走れる革靴”的な、スニーカーとドレス靴のハイブリッドが出てきたり、その分野も活況ですよね。

森岡 上質感あるシンプルスニーカーから、見た目ドレス靴だけど履き心地はスニーカーみたいなものまで、多様に進化していますよね。

山浦 ただ、クラシックスーツにスニーカーはミスマッチですから、しっかり区別して活用することが大切。

森岡 そうですね。スニーカーを履きたいなら、合わせるスーツまで含めて見直す必要があるでしょう。

山浦 そうすると、どう合わせるの?みたいな悩みが増えてきそうです。

森岡 スニーカーが浸透するほど、ドレスコードが再び混乱するでしょうね。

中村 新しいスタイルですからね。みんなお手本を求めていると思いますよ。

森岡 それは是非、M.E.さんに示してもらわないと(笑)。

金森 頑張ります!

森岡さんが実感する”今の、そしてこれからの”スーツの世相

1. まだまだ立場のある仕事人でも相応の装いをしていないケースは多い
2. 意識の高いエグゼクティブは服をビジネスツールとして活用し始めている
3. スニーカー通勤の浸透とともにドレスコードが再び混乱しそう

“グレーソーン”な装いも上手に取り入れれば最高の自己プレゼンに

ファミリーマート代表取締役社長 澤田貴司さん

こちらはファミリーマート代表取締役社長 澤田貴司さん。「仕事で茶のスーツはアリか?といえばスタンダードではない。でも、澤田さんはあえてグレーゾーンの茶を選びました。時にはルールを堅守するより、”キャラ”を押した方が好印象な場合もある。その実例です」(森岡さん)


2024

VOL.342

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