ランウェイを賑わす数あるメゾンの中でも、とりわけクラシック好きに愛される「ブリオーニ」と「ダンヒル」のスーツが、大きな変化を見せている。しかし精神は変わらない。進化するクラシック。その最前線を体験して欲しい。
BRIONI
ブリオーニのスーツ「パリオリ」
鋭利なシルエットに潜む最高の仕立てと革新への姿勢
スクエアな肩線に、定番のそれよりフィットしたボディ。鋭利なシルエットの美しさに、思わず息を呑む。ラペルは幅広でゴージラインも低め。クラシックな趣を色濃く匂わせながら、これにブーツを合わせてしまう大胆なスタイル提案にも驚く。ブランド初の女性クリエイティブディレクター、ニナ・マリア・ニーチェがクリエイトする新しいスーツスタイルは、かくも新鮮な刺激と優美に満ちている。しかし、今でこそ当然のように用いられるライトウエイトのしなやかな生地を、いち早くメンズスーツへ用いたのもブリオーニだったのだ。手仕事を随所に駆使した最高峰の仕立てと、革新の精神。これこそが、ブリオーニというブランドに変わらず受け継がれる本質といえよう。
クリエイティブディレクター / ニナ・マリア・ニーチェ
メゾン・マルタン・マルジェラに長きにわたって携わり、デザイナー退任後はクリエイティブ・ディレクションを担当。2017年6月から現職。ブリオーニ初の女性リーダーとして、その辣腕を振るう。
DUNHILL
ダンヒルの「ウェストミンスター」セットアップ
くつろぎの中に光る、英国らしさ
逞しいショルダーおよびチェストを備えた、構築美に溢れる正統派のブリティッシュスタイル…ダンヒルのスーツにそんなイメージを抱いている人も多いだろう。同じ感覚で新作のセットアップを着れば、かなり驚くに違いない。何せ肩パッドのないアンコン仕立てで、しなやかで軽い。ルックスにしても、紳士の威厳というよりむしろ、リラックスしたムードに満ちているのだ。一方でウールツイルの色合いには男らしさが溢れ、ラペルをめくると、いつものようにアゴぐせと呼ばれるダーツ取りがなされているのがわかる。これは胸の立体感を増すための、クラシックな意匠。ダンヒルならではの端正な仕立てが、世のアンコンスーツとは一線を画す、美しい立体感を生み出す。
クリエイティブディレクター / マーク・ウェストン
バーバリーにてメンズウェアのシニアバイスプレジデントデザインチームを率いる経験を積んだ後、2017年5月から現職。英国クラシックとさまざまな異要素をミックスした新鮮なスタイルが話題を呼んでいる。
[MEN’S EX2018年08月号の記事を再構成]
撮影/野口貴司(San・Drago)、若林武志 スタイリング/四方章敬、佐々木 誠 ヘアメイク/松本 順(辻事務所) 構成・文/伊澤一臣 文/長崎義昭・中河由起恵(以上Paragraph)、吉田 巌(十万馬力)、秦 大輔、間中美希子、礒村真介、酒向充英 撮影協力/横浜開港記念会館