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セレクトショップ「グジ」

ついに京都で独立、続いて大阪出店

「僕たちはパイオニアではありません。過去にカリスマたちが切り開いたあとを歩いているにすぎません。先人たちは、たくさん買い込んで、それを日本へ送って店頭に並べていましたが、いまや多くのブランドは日本に代理店がありますから」と、田野さんは自分たちの功績に対して控えめだ。

オープン当時は珍しいインポート製品を扱うショップとして、売り上げを作る一方で在庫も多かったそう。つづく2009年に大阪のハービスプラザに出店のチャンスが訪れて、田野さんは店を構える決断をした。大勝負の大阪出店だけに、人に任せて失敗しては悔いが残る。是が非でも大阪で成功をつかみたい田野さんは、友人に依頼して有能なスタッフを見つけてもらい、京都と大阪を各2名で運営することにした。ところが……。

「オープン当初はあまりにもお客さんがこなくて……。当時、店舗運営に加えて楽天でも販売を始めました。インターネット通販は売れるという噂を聞いて、半信半疑でトライしたのです。1日1アイテムを選んで、自分で着用してブログで紹介して、という発信を毎日続けたら、確かに意外と売れるんですよ」。

田野さん私物のボードイン アンド ランジのベルジャンシューズ
【田野さんの私物拝見】田野さんが、ブレイク必至と絶賛するのが、英国のボードイン アンド ランジ。「世界一美しいベルジャンシューズだと思います。10年愛したいシューズです。2018年春からグジでも2型を扱っています。久々に出会った大ヒットを確信するアイテムです」。グジでは2018年秋に3型を展開予定。

ネットの売り上げが瞬く間に増えた

2009年の7月から始めたところ、翌月には売り上げが100万円に達した。嬉しさのあまり、居酒屋で慰労会をしたのが、田野さんのよき思い出となっている。さらに9月に売り上げは300万円に急成長。発信をしていたおかげで「インコテックス、大阪」といったキーワード検索で、グジを見つけたお客様が店舗にも足を運んでくれるようになったのだ。開店当初はヒマだった大阪店が急に忙しくなり、安定していた京都のお店との相乗効果でビジネスは順風満帆に。波に乗る田野さんは仕入れ金額を倍にして、2010年、2011年は一気に売り上げが大きくなった。

「当時はまだヤフーや楽天で高額なものが売れるとは思われていなかったのです。でも、ネットと店舗が連動するビジネスモデルが当たった時代でした。成功したのは僕たちが優れていたからではありません。ほかのライバル店さんたちも同じように成長なさっていますから、時流にマッチした。ラッキーだったということでしょうね」。

田野さんによると、当時はボリオリ、ラルディーニ、タリアトーレ、フィナモレ、インコテックス レッド、バークなどがヒットブランド。あるときは10万円ほどするジャケットを不安ながら30着買い付けたところ、一晩のうちに5着、6着とネットで注文が入ることまであった。店頭ならば、魅力を説明してようやく買ってもらえる高額商品が、接客なしで売れるのだから、驚くのも無理はない。

グジ 代表取締役 田野浩志さん

業界の活性化を目標に人材育成に取り組む

「いいことばかり続きませんよ(笑)。2015年〜2016年ごろに、このバブルが終わりました。真の実力が問われるのはこれからです。そのため、大阪店をリニューアルするなどしています。かつて、セレクトショップが人気だった時代は、スタッフの募集を出せばたくさん応募がありました。でも、いまは時間が不規則で立ち仕事、さらに洋服離れもあって敬遠されがちです。マーケットが縮小していると言っていいかもしれません」。

そんな田野さんは、開業から10年目に京都・松ヶ崎にグジ ラボラトリオを開設している。こちらは次世代のファッション業界で活躍する販売員、バイヤー、経営者を育成するためのいわば学び舎だ。セレクトショップでは、商品の魅力が重要なのは言うまでもない。が、その良さを見抜いたり、伝えたりするのは、やはり人。田野さんと話をしていると、熱心かつ自分の思いや考えを伝えることに優れた人物であるとよくわかった。グジの接客にも、彼の人柄はきっと反映されているだろうし、これがお店を成長させた大きな理由でもあるに違いない。

「謙虚を装っているだけです」と冗談ぽく、話すところも何とも朗らかで人当たりがいい。

1980年代から90年代にかけて、成長したセレクトショップが、いまでは全国に展開され、大型化していく一方、グジは新世代ショップの期待の星である。これからも田野さんの活躍に大いに注目していきたい。

「いまはミックスがトレンドなので、イタリアのジャケットにアメリカのボタンダウンシャツ、英国のタイなどを合わせています」。ジャケット/スティレ ラティーノ、シャツ/インディビジュアライズド シャツ 、パンツ/インコテックス、タイ/ドレイクス、シューズ/クロケット&ジョーンズ。

「いまはミックスがトレンドなので、イタリアのジャケットにアメリカのボタンダウンシャツ、英国のタイなどを合わせています」。ジャケット/スティレ ラティーノ、シャツ/インディビジュアライズド シャツ 、パンツ/インコテックス、タイ/ドレイクス、シューズ/クロケット&ジョーンズ。

「好きなブルーで、色味を統一しました」。スッキリ見えるシルエットのジャケットなので、ダブルブレステッドのフロントを開けていても、爽やかな印象に。またジャケットとタイの生地の質感が調和しているのもさすがだ。

「好きなブルーで、色味を統一しました」。スッキリ見えるシルエットのジャケットなので、ダブルブレステッドのフロントを開けていても、爽やかな印象に。またジャケットとタイの生地の質感が調和しているのもさすがだ。

クロケット&ジョーンズのタッセルローファーは、グジの別注モデル。

クロケット&ジョーンズのタッセルローファーは、グジの別注モデル。

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