そしてこう付け加えた。「だからって、私より先に死ぬことは絶対許さないから!」と。生まれてその年になるまで、父の事故に関して、母子であまり話したことがなかったなーと思ったのと同時に、父の死に対し、子どもの前ではいつも気丈であった母の本心、寂しさを、免許取得を機会に、初めて知ったような気がした。
免許に関しては、当初の約束通り、規定時間をオーバーすることなく取得。高3の9月から、私の夢のドライブ人生が始まったのであります。言わずもがな、実家の車に初心者マークを付けての、彼女との湘南の海への夢のドライブも遂行。まだナビも、グーグルマップもない時代。デートの前日の夜、道を間違えないよう、地図を助手席に乗せ、デートコースの道を一度走ってみるというなんともアナログな二度手間も、良き思い出となっている。
初めてのマイカーは24歳のとき。当時CMをさせていただいていた、マツダファミリア。オートマティック車が主流となっていたが、運転の楽しみを味わうため、マニュアル車を選択。その後、27歳、大河ドラマ『武田信玄』の撮影を終了した記念として、自分への褒美に車を乗り換えようと決心。知人の紹介で相談に伺ったのが、今回のもう一つのテーマ、鹿児島。そこで車に関する仕事を多角的になさっている羽仁正次郎さんにお会いしたのである。
30年前、まず伺ってビックリ!目の前には、見たこともない美しいヴィンテージの車が所せましと置いてある。目的は、仕事場への足として使える車を探しに行ったのだが、到底今の自分には扱えないような美しいフォルムのヴィンテージ車達に魅了されてしまった。車好きにも色々な趣向があると思うが、私の場合はなんと言ってもフォルム。しかも、車のヒップライン好き! 最近の車は、形が均一化されフォルムの美しさを感じられる物が少ないのだが、ヴィンテージ車たちの、なんと個性的で、美しいフォルム、美しいヒップラインを持っていることか。
何故、このような夢のような車たちを集めることになったのか、羽仁さんに、お話を聞いてみた。
「ヴィンテージ車たちは、なんと個性的で美しいフォルム、美しいヒップラインを持っていることか!」
─最近の車の均一化されたフォルムを嘆きつつ……。
[MEN’S EX 2018年8月号の記事を再構成]
題字・文/中井貴一 撮影/熊澤 透 ヘアメイク/藤井俊二 構成・文/まつあみ 靖