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加藤 綾子さん、阿部 佳さん

もっとコンシェルジュの方に上手く頼れるようになりたいです
(加藤さん)

加藤 個人的にはコンシェルジュにどこまで甘えていいか、正直わからない部分もあります。海外ならまだしも、日本のホテルが相手だと「どうして自分でやらないんだろう?」と思われちゃったらどうしようとか(苦笑)。

阿部 確かに日本人のお客様は基本的に自分で調べていらして、最終確認だけをする方が多いです。海外のお客様は「明後日から会社の優良顧客20人を1週間滞在させるので、予定を立ててくれ」とか平気でおっしゃいますから(苦笑)。他にも「僕はこういう仕事をしているんだけど、日本にも輸出をしたいから、どこの会社に行けばいい?」とか「20年くらい前に隣に住んでいた鈴木さんという日本人を探してほしい」とか「リビングルームにかかっている絵と同じ絵が欲しいけど、作者の名前はわからない」とか、難しい球が来ることもあります。そういう方が燃えたりもするんですけど(笑)。

加藤 阿部さんはその全部の球を打ち返されたんですか?

阿部 鈴木さんの件はほとんど無理だなと思ったんですけど「鈴木って日本で何番目に多い名前か知ってる?(笑)」と伝えたら、お客様もさすがに笑われて、ただ、性別は男性だと言うので「これで半分になったわね(笑)」と。最終的に農機具のセールスをしていたというヒントから、それらしい会社を順に当たっていったら、それらしい人に当たりました。

加藤 ほとんど探偵ですね(笑)。

阿部 優良顧客20人の1週間の予定を提案した際は、お客様が「2日で全ての場所の下見に行く」とも言い出して、それぞれのレストランに短い時間で試食ができるようにお願いし、下見用のハイヤーも手配して送り出したら、夜に戻ってきたお客様が「明日は下見をしないで遊びに行く」とおっしゃったんです。そのときはさすがに震えました。「日本のコンシェルジュなんて信用していなかったけど、結構やるじゃん」と思ってくださったのかなと。まだ駆け出しの頃でしたけど、海外のお客様はコンシェルジュを信頼しているからこそ、求めるものも高い。プロ意識を植え付けられた経験ですね。

加藤 ちなみに2020年のオリンピックは、改めて東京や日本を世界のお客様に知ってもらうチャンスでもありますね!

阿部 ほとんどの方々はお祭り騒ぎの東京というか、イレギュラーな日本を楽しんで帰られると思うのですが、観光人口の達成が第一目標になってしまってホテルもどんどんできている一方で、人が足りていないですね。

加藤 AIシステムの導入は後押しになりませんか?

阿部 AIが増えれば便利になると期待していますが、本当の東京や日本を伝えるのは、人間の仕事です。つい物事を世界に合わせることばかり考えがちですが、それ以前に、この街や国の歴史や文化、ルールに対して妥協せず、「物語として伝える格好の場だ」というプロ意識を私たちがきちんと持つことが大切。そうでないと、お客様に心から「またここに来たい」とおっしゃっていただくのは難しいと思います。

加藤 おっしゃる通りですね。

阿部 あとプロ以外に一般の人たちも、もうちょっと人に優しくあってほしい。女性の荷物を持つ、道で困っている観光客に話しかける、お年寄りを手助けする。「誰かに何かをしてあげると、こんなに喜んでもらえて、それは楽しいことなんだ」ということを、特にこれからの日本を担う子どもが感じる場面を作っていかないといけないと思っています。


カトMEMO

  • 柔らかい語り口の中にも、プロフェッショナル意識がある。
  • 「気遣いさせている」と思わせない気遣いのテクニック。
  • 色々な変化に、なんでも楽しんで対応できる。
  • 「自分に寄り添ってくれている」と思わせられる、お客様の気持ちを読む力。

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