大学卒業後、ノーサンプトンへ留学
次いで大学では英国への興味から英文科へ進むものの、卒業が迫っても本当に興味を持てる仕事が見つからず、どうするべき考えがまとまらなかった。
「卒業後、英国に1年間の語学留学に行く決心をしました。ところが先生に相談すると『英語を学ぶだけの留学なんてもったいない。ほかにやりたいことがあって行くのならいいけれど……』とのアドバイスをもらうことに。そういわれて、考えたところ、英国の靴は好きだし、靴を手作りするのはおもしろそうだとの答えに行きついたわけです」。
さっそく英国の様々な専門学校を紹介するガイドブックを読んで、川口さんが見つけたのはノーサンプトンのウェリンボロにあるトレシャムインスティテュートという靴職人の専門学校だった。下見に一度出かけ、2002年9月に同校に入学。「靴作りについての知識はゼロの状態でのスタートでした」と川口さん。
課題に追われた靴学校での毎日
学校に入ると、毎日が課題の連続。週に一度テーマを与えられ、一週間で一足作らなくてはいけないのだ。自分のデザインから、パターンを起こし、素材を切って釣り込んでフィニッシュまでを行なう。レディスのコートシューズ、メンズの外羽根、サンダル、さらにはスニーカーと課題は次々に押し寄せてくる。しかも、課題が終わらない場合は未完成のまま放置し、翌週には次の課題に移るようなハイペースだ。
「ハンマーでコンコン叩いて手作業で作るようなイメージを持っていたけれど、学校で教わるのはほぼ量産靴の作業のみでした」。
詳しく川口さんに聞いたところ、通っていた学校はノーサンプトンの地場産業である靴製造の現場で即戦力になる人材を育てるための場所。注文靴のノウハウを教える場ではなかったそうだ。一年間、トレシャムインスティテュートに通ったなかで、印象的な出来事を聞いてみた。
DATA
マーキス
住所:東京都中央区銀座1丁目19-3 銀座ユリカビル8F
TEL:03-6912-2013
http://marquess-bespoke.blogspot.jp/
完全予約制のため、来店希望の場合は事前に電話またはホームページに記載のメールアドレスから予約を入れること。
オーダー価格/シューズ31万8000円〜(仮履き一回)、シューツリー2万8000円。ともに税別。
撮影/西山 航 取材・文/川田剛史