ジョルジオ アルマーニとラルフ ローレンの魅力に触れる
1980年代半ば、世間では国内のマンションメーカー(*2)が打ち出したDCブランド(DCはデザイナーズ&キャラクターの略)が急成長していた。そのあとに来たのがインポートブランドのビッグウェーブ。
「映画『アメリカン・ジゴロ』にジョルジオ アルマーニが登場したんですよね。初めてジョルジオ アルマーニを手にしたのは24歳だったかな。当時のガールフレンドからプレゼントされたネクタイが最初でした。7.5cm幅くらいのペールグリーンのソリッドタイで、仕立ては非常に芯が薄くて軽やか。ブランドがブレイクする少し前で名前は知っていましたけれど、やっぱり手にするとかっこよかった。当時はDCブランドもジョルジオ アルマーニのテイストをデザインソースにしているところが多かったですね。そのようななか『バルビッシュ』は当時のイタリアンテイストをうまく取り入れていてとても好きでした」
その頃、ジョルジオ アルマーニと並び、絶大な人気を集めていたのがラルフ ローレン。トラッドにはあまり関心のなかった森岡さんにとっても、ラルフ ローレンは特別だったようだ。森岡さんに印象深い記憶を聞いてみた。「オープンして1、2年目くらいのニューヨーク本店に、メンズクラブの取材で訪れました。当時、ディスプレイに至るまで店内のものはなんでも買えるという触れ込みだったように記憶しています。まだ日本には登場していなかったRRLのアイテムを買いました。店内ではベルトや靴のバックルにイニシャルを刻印してくれるサービスが行われていたのが印象的でした。」

順調に思えた矢先の大病
そうしてメンズクラブ編集者として経験を積んだ森岡さんは、入社から10年で独立。グローブという名称の事務所を立ち上げた。現在、ファッション誌の制作現場では編集者と洋服の貸し出し・管理・着せ付けを行なうスタイリストの職業は分業化されている。が、当時のメンズクラブでは編集者がスタイリストの役割をこなす伝統があったため、森岡さんは編集業務とスタイリングの両方をこなすことができた。
ファッションディレクター、スタイリストとして順風満帆の森岡さんは、雑誌のスタイリングのほか、俳優専属のスタイリングなども精力的にこなしていく。当時、竹野内 豊さんのスタイリングを担当していたことからも、森岡さんの売れっ子ぶりが伝わるだろう。TV番組「ロングバケーション」(1996年)では竹野内さんのスタイリングサポート、ファースト写真集「YUTAKA TAKENOUCHI」、「続・星の金貨」(2001年)では竹野内さんのスタイリング。これらはフリーランスになった当時の森岡さんの代表的な仕事だ。ところが「続・星の金貨」の放送が終盤に差し掛かったころ、森岡さんは急性骨髄性白血病で倒れてしまった。ベッドの上から、奥様に指示を出し、最終回までの仕事は無事に終えられたものの、森岡さんはその後3年間の闘病生活を過ごすことに。
退院して真っ先に買ったジル・サンダー
闘病生活を終えた森岡さんが欲しくて買ったのがジル・サンダーのスーツ。 「ミニマル(最小限の、の意味)という言葉が流行していて、ジル・サンダーのスーツはさらっと着られて普通に見える一方で、クールな佇まいが魅力的でした。ほかにもプラダやニール・バレット、グッチなどの洋服を何かに取り付かれたように買いました(笑)」
