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リアルビスポーク展への思い

腕利き職人スーパースター列伝

渋谷では鞄づくりの教室も運営しながら、自分の鞄づくりを懸命に続け、気が付けば18年の時間が流れていた。引っ越してきたころは「渋谷のチベット」なんて呼ばれるほど、のんびりして環境の良い場所だったが、時間とともに並んでいた立派な家々は姿を消し、騒々しさが目立つようになってきた。環境の変化に疲れたこともあり、藤井さんは豊島区へ工房を移転し、現在に至る。

工房を移転したころ、藤井さんが始めたのが「リアルビスポーク展」。ヒロヤナギマチ、羊屋とともに、作品を展示し、職人の技術と手仕事の魅力を発信するイベントだ。便利な渋谷から、商業地ではない現在の場所へ移転して、お客さんが今まで通り足を運んでくれるのだろうか?との不安もあって、自ら情報発信をすることに決めたという。

しかし、そんな心配は取り越し苦労だった。結果的には若いファンも増え、従来の顧客も今まで通り足を運んでくれている。現在ではFugeeの鞄は6年待ちということからも人気ぶりがうかがえる。

腕利き職人スーパースター列伝
2016年4月に行われた第二回「リアルビスポーク展」の様子。藤井さんは革を使った鞄の魅力について講演を行なった。

コラム:藤井さんの工房を拝見!

藤井さんの工房は現在、豊島区要町にある。工房で実際に使用されている道具、そして藤井さんの心強い相棒、金原リエさんを紹介してもらった。

金原さんは、もともと藤井さんの主宰する鞄教室の生徒だったが、とても優秀だったため、藤井さんの片腕となった人物。いまではFugeeの鞄を共同製作しており、工房に欠かせない存在だ。現在は藤井さんが進めている口枠を使った鞄づくり(次ページで紹介)をともに進めているが、それが一段落したら、自分で取り組みたいアイデアがあるという。

それはなんと和に似合うバッグ。金原さんはお茶や着物といった和の世界にも造詣が深く、和服の女性に似合う上質な鞄が必要だと考えている。和装に洋服のときと同じ鞄を合わせるよりも、和装にこそ似合うバッグを。女性ならではの繊細な感性がどんな形になるのかは実に興味深い。

鞄職人/藤井幸弘さん

鞄職人/藤井幸弘さん

『銀花』第三十四号(昭和53年、文化出版局)

『銀花』第三十四号(昭和53年、文化出版局)

『銀花』第三十四号(昭和53年、文化出版局)

『銀花』第三十四号(昭和53年、文化出版局)

東京・国立で自分の工房を始めたばかりの頃

東京・国立で自分の工房を始めたばかりの頃

渋谷に工房を構えていた時代の藤井さん

渋谷に工房を構えていた時代の藤井さん

渋谷に工房を構えていた時代の藤井さん

渋谷に工房を構えていた時代の藤井さん

現在、工房では2クラスの教室も行われている。

現在、工房では2クラスの教室も行われている。

「キリ」は革に糸を通す穴を開けるときに使う。使いやすいように先端を自分で削り、カスタマイズしてある。

「キリ」は革に糸を通す穴を開けるときに使う。使いやすいように先端を自分で削り、カスタマイズしてある。

革に縫い目の位置を刻む「目打ち」。日本製とフランス製では刃先の形状が異なる。革やステッチの雰囲気によって、道具を変えているそう。

革に縫い目の位置を刻む「目打ち」。日本製とフランス製では刃先の形状が異なる。革やステッチの雰囲気によって、道具を変えているそう。

革を縫い合わせる際に、素材を固定する「馬」と呼ばれる道具。自作のものとフランス製を作業によって使い分けている。

革を縫い合わせる際に、素材を固定する「馬」と呼ばれる道具。自作のものとフランス製を作業によって使い分けている。

革を削る「かんな」。刃と本体が蒲鉾上にカーブしている点にご注目あれ。実はこれ、パーツの窪みを均等に削るために、窪みにはまるように自分でカスタマイズしたものなのだ。

革を削る「かんな」。刃と本体が蒲鉾上にカーブしている点にご注目あれ。実はこれ、パーツの窪みを均等に削るために、窪みにはまるように自分でカスタマイズしたものなのだ。

金原リエさん

金原リエさん

閉じた状態の棒屋根の口枠。写真はアンティークのバッグから取り外して磨き直したものだ。

閉じた状態の棒屋根の口枠。写真はアンティークのバッグから取り外して磨き直したものだ。

棒屋根が開くとこうなる。二本の棒状のパーツの両端に「く」の字型に曲がるヒンジが取り付けられており、開くと四角い枠になる。

棒屋根が開くとこうなる。二本の棒状のパーツの両端に「く」の字型に曲がるヒンジが取り付けられており、開くと四角い枠になる。

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