まずは、やはり動力性能が凄まじい。639psの最高出力、900Nmの最大トルクのおかげで、2トンを超える車重をまるで苦にすることなく豪快な加速を見せるから堪らない。後半キツい上りとなるCOTAのメインストレートでの走りは、まるで離陸しそうなほどだった。しかもこのエンジン、新たにボールベアリングタービンを採用することによって全域でレスポンスが向上し、吹け上がりも緻密さ、滑らかさが増しているなど、情感に訴える要素にも磨きがかけられている。
そして何より歓喜させるのがフットワークである。ステアリングフィールは饒舌で反応も正確。ターンインでは狙ったラインにぴたりと乗せることができる。ひと回り軽く、小さいクルマを操っているのかと錯覚するような切れ味だ。
とは言え、実際にはそれなりに長さも重さもあるだけに、テールはやや滑り出しが早め。しかしながら決してだらしなくスライドが止まらないなんてことはなく、COTA前半区間のコーナーの連続する区間で、ステアリングとアクセルの操作でアングルを維持するのも、横ではなく前にクルマを進ませるのも自在にコントロールできたのだから驚き、そして夢中になってしまった。
これだけの走りが可能となっているのは、基本骨格であるボディの入念な補強に拠るところが大きい。モノコックこそスチール製だが、各部にアルミやCFRP製部品を多用し、また徹底的な補強が行なわれた効果で、その剛性感は市販車では過去、体験したことのないようなレベルにある。もちろん、走行状況で空力特性を変化させるアクティブエアロシステム、エアサスペンション、後輪操舵機構、電子制御LSDといったアイテムも、ダイナミクスの向上に貢献していることは間違いない。
しかも「AMG GT 4ドアクーペ」は決してスポーツ性だけのクルマではないのだ。強靭なボディは快適性にも効いていて、乗り心地は非常に上質。望むならパフュームアトマイザーによって室内をアロマの香りで満たし、リラックスしてドライブを楽しむことだってできる。スタイリッシュクーペとして見ても、仕上がりはハイレベルだ。
年々、飛躍的に販売を伸ばしている絶好調のAMGらしい、勢いが詰まった1台。日本には2019年の中盤にも上陸する模様である。
ボディカラーのバリエーション(写真3枚)
※表示価格は税抜き
文/島下泰久 写真/メルセデス・ベンツ日本 編集/iconic