普通だけど特別なクルマ
80年前に設計されたクルマだからといって、特別な操作や儀式は必要ない。鍵をひねればすぐにエンジンがかかるし、クラッチやマニュアル操作もごくごく普通のものだ。意外なほど日常的に使える。あえて面倒な点をあげるとするならば、幌を閉じるのが面倒なこと。そして「4/4」にはエアコンがつかないこと(2リッターのプラス4にはつく)。
モーガン 4/4の外界との距離(写真2枚)
それらも雨の日には乗らないと決めてしまえば、なくてもいいとも言える。この日の気温は36℃を超えていたし、きっとエアコンがついていたところであまり変わらない気もするのだ。そんなことよりも、外界との距離が近いことが新鮮だった。普通のオープンカーともまた違うものだ。周囲を走るクルマや歩道を歩く人たちと、自然とコミュニケーションを取りたくなるような、まさにオープンな気持ちにさせてくれるのだ。
かつてオトコの道楽の三種の神器はクルマ、時計、カメラ、なんて言ったものだ。しかし、80年前の設計、デザインのまま新品で買えるカメラや時計なんておそらくないだろうし、いまの流行の家電が80年後も新品で買えることなんてとても想像できない。そう考えれば、このモーガンが新車で買えることの凄さがよくわかる。年間生産台数は850台。納車はほぼ1年待ちという。クルマ道楽のやり方もいろいろあるけれど、新車のクラシックカーを買うって、なかなか洒落た選択だと思う。
文/藤野太一 撮影/デレック横島 編集/iconic