ルノー・メガーヌR.S.のディテール(写真6枚)
狭いコースを信じられない速度で駆け抜ける
ウルゴン氏とメリメ氏、それぞれのメガーヌR.S.に乗り込んだ。まず1周目はスポーツ・モードで。上りの緩いコーナーが続く高速区間では、4輪操舵の同位相が効いてレールにのったように、ロールは抑え目でビタリと安定したまま、左右のコーナーを鮮やかに抜けていく。スポーツ・モードではニュートラル・モードの時よりESPがある程度、介入するのを遅らせてくるので、ドライバーが腕試ししつつも、最後はちゃんと安定させてくれる制御となっているとか。
続いて下りながら、左右に素早く切り返すようなS字が二度、しかも徐々にキツくなるという嫌らしい区間なのだが、ウルゴン氏とメリメ氏はいずれもアクセルを緩めず、躊躇せずステアリングをクイックに切る。それでもスキール音を上げずに、メガーヌR.S.はコーナーのインに飛び込んでいく。
さらにその先は、上りながら中低速コーナーが連続するが、メガーヌR.S.は水を得た魚のように、4コントロールの逆位相を利して、恐ろしい旋回速度で駆け上がっていく。1.8リッター直4直噴ターボを滑らかに謳わせ、荒れた路面でもギュウギュウに地面を掴んで離さない感触がヒシヒシ伝わってくる。
こうして一周して戻ってきた直線上では次なるアトラクションが控えていた。150km/hオーバーの速度域でダブルレーンチェンジ、つまり急激な車線変更の動きを試すという。スピンモードに陥ってもおかしくないほどの舵角をあてては中立に戻すのだが、メガーヌR.S.は一瞬、キュッと軽くタイヤを鳴らしただけで、フラットな姿勢を保って直進を続ける。
「じつは新しいメガーヌR.S.は、ひたすらオン・ザ・レール感覚に徹するだけのシャシーじゃないんです。通常のFFと違って4輪接地の前後バランスが安定しているので、滑り出しがとっても穏やかだから、限界域でもすごく扱いやすいんですよ。だから個人的には、ESPはオフでありながらも峠道でも楽しめる出来ばえだと思っています」
新しいメガーヌR.S.の足回りは、横方向の動きは4輪操舵で巧みにコントロールして、縦方向の動きはHCCダンパーによって快適性を確保しつつという、きわめて欲張った設計なのだ。もはや5ドア・ボディがスタンダードとなり、一台で日常生活も済ませる以上、相応の快適性と使い勝手よさが求められるCセグ・ホットハッチ市場で、パフォーマンスだけで尖ることを潔しとしないが、その基本レベルごと引き上げることで素晴らしくオールマイティな一台に仕立て上げたのだ。