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ポルシェのすべてのモデルに共通するもの。それはセダンであっても、SUVであってもポルシェが創るすべてのクルマは”スポーツカー”としての資質をもっているということに他ならない。ポルシェは自らそれらのモデルを”4ドアスポーツカー”と謳っている。いまのポルシェにはカイエンとマカンという大小2種類のSUVモデルがありパワフルなガソリン車だけでなく、プラグインハイブリッドモデルなども存在している。それらを乗り継ぎながら、陽光に恵まれた福島県内を旅した。
vol.1 カイエン SE-ハイブリッド
![voice_20171107_Cayenne_mainn.jpg](https://www.mens-ex.jp/column/images/voice_20171107_Cayenne_mainn.jpg)
ポルシェのハイブリッド!? そのイメージのギャップに驚かれるかもしれないが、ポルシェはハイブリッドのみならずEVなど、電動化に積極的なメーカーだ。実は創業者であるポルシェ博士が1989年に初めて作った自動車も電気自動車だった。そして、いまWEC(FIA世界耐久選手権)で活躍する最新のレースマシン「919ハイブリッド」もその名のとおりハイブリッドカーだ。
そしてこの「カイエンSE-ハイブリッド」は、2010年にデビューした第2世代のカイエンに設定されたプラグインハイブリッド(PHV)モデル。PHVとは、”プラグイン”という言葉があるように充電可能なことを意味しており、普通のハイブリッドカーより多くのバッテリーを搭載し、EV走行可能距離が長くなるメリットがある。ハイブリッドカーと電気自動車の両面の性格をもつというわけだ。
![voice_20171107_Cayenne_cap2.jpg](https://www.mens-ex.jp/column/images/voice_20171107_Cayenne_cap2.jpg)
カイエンの車体を象ったキーをひねるとシステムが起動する。ポルシェだからといって、すごいエンジン音で目覚めることを期待していると静かで拍子抜けするほどだ。デフォルトの設定である”Eパワーモード”でアクセルを踏むと、エンジンが始動することなく、スルスルと走り始める。カタログでは一充電あたりのEV走行可能距離は29.9kmとあるが、実際にも20km前後くらいまでEV走行が可能だった。日常生活における日本人の1日の平均走行距離は20?30kmというから、近所の買い物の足にだっておおむねガソリンを使うことなく気兼ねなしにポルシェを使えるというものだ。
バッテリーの残量が減るとエンジンも併用するハイブリッドモードへと切り替わる。エンジンは3リッタースーパーチャージャーだが、予想していたより音量は低くおさえられており、V6らしく滑らかに加速していく。また回生エネルギーなどをより積極的にバッテリーへ充電するEチャージモードを選ぶことも可能だ。EVと違ってバッテリー切れの心配をする必要もない。
そもそもロングドライブでこそポルシェの本領発揮だ。PHVモデルのためそれほどスポーティに仕立てられているわけではないが、それでもステアリングを握り、シートに腰をかけると剛性感の高さが伝わってくる。それは走ることには絶対に手を抜かないポルシェに共通するアイデンティティだ。
![voice_20171107_Cayenne_cap11.jpg](https://www.mens-ex.jp/column/images/voice_20171107_Cayenne_cap11.jpg)
磐梯山の北側に縦に延びた桧原湖までドライブした。ここは裏磐梯地域最大の湖で、夏はバスフィッシング、冬はワカサギ釣りと釣り愛好家にもよく知られた場所だ。この日もキャンプ場にはバイクのツーリング客が訪れていた。カイエンをEパワーモードで静かに湖畔へ寄せて、しばしの休憩。じっくりとその細部を眺めてみる。
この「カイエン SE-ハイブリッド」は限定モデルの”プラチナエディション”。ホイールアーチをボディカラーと同色に、RSスパイダーデザインの大径20インチホイールを装着。内装でもヘッドレストにポルシェのロゴをあしらったスポーツシートや、ステンレス製ドアエントリーガードにも”Platinum Edition”ロゴが入る。またヘッドライトやBOSEサウンドシステムなど、特別装備満載の最終仕様だ。
カイエン SE-ハイブリッドのディテール(写真13枚)
実はカイエンは、2世代目の登場から約7年を経て第3世代へとモデルチェンジする。日本でも東京モーターショーでお披露目されたばかりだ。ただ、PHVモデルなどは発表されておらず、上陸まではまだ当分時間がかかりそうだ。
クルマにも熟成肉よろしく”熟成の最終型”という言葉があるが、このカイエンはまさにそれ。じっくり煮詰められた完成度の高い乗り味、時代の気分にあったPHVで、スパイスの効いた充実の装備、まさに今が食べ頃だ。
撮影/柳田由人 文/藤野太一 構成/iconic