矢部克已「ニッポン、いい店(ショップ)いい工場(ファクトリー)#2」山形 – 佐藤繊維

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佐藤繊維 ファクトリーギャラリーを見る(写真2点)

【人物】

4代目となるのが佐藤正樹さんだ。文化服装学院で学び、26年前に家業を継いだ。金髪のヘアースタイルは、ヨーロッパの超有名ブランドの繊維を扱うスペシャリストたちにお馴染みだ。しかし、家業に加わった頃は、「佐藤繊維」は無名だった。他のニットメーカーとさほど変わらない糸を作っていたため、佐藤さんは独自の糸づくりに着手する。失敗を重ねながらも糸づくりにのめり込み、’97年にイタリア行きの機会を得る。

【ターニングポイント】

世界最大級の糸の展示会”ピッティ・フィラーティ”を訪れ、ファンシーヤーンの老舗メーカー「リネアピュウ」の糸づくりに魅せられた。工場見学では、工場長がものづくりを熱く語り、糸のつくり方まで教えてくれたという。しかし待て。やりたいのは彼らの糸や色を真似することではない。倣うべきはイタリア人のものづくりに対する、強固な思いや情熱が大事だ、と。振り返れば、それは自身が熱心にやってきたこと。糸づくりに迷いがなくなった。

【生産】

【生産】昔の機械を改良し試行錯誤を重ね、当初4種類しかなかった糸が多彩に広がった。2007年、「佐藤繊維」は”ピッティ・フィラーティ”の出展を果たす。ヨーロッパの常識にない奇抜な糸の展示に、極細のモヘアも並べた。ニット用のモヘア100%は、通常12m/gが一般的だが、なんと52m/gの糸を出品した。突飛に見えた糸も実は、精緻な技術力があるからこそできることが認められ、世界有数のブランドから注文が殺到。さらに’08年、オバマ米国大統領就任時に共にした、ミシェル夫人が着用のカーディガンは、「佐藤繊維」の糸が原材料だとニュースになった。’16年にはニットブランド「991」を”ピッティ・ウォモ”で発表。身体に沿った抜群のパターンと高度な縫製技術によるニットジャケットや、スーパー120’sのウール糸で編んだ洗えるセーターを出品し、日本の専門店が惚れ込んだのだ。

【ポリシー】

現在、「佐藤繊維」がつくる糸は色展開を含めて約3000種。社員は約200人、染色工場に25人、メンズとレディスのアパレルを販売するグループ会社に約60人ほどの大きな企業となった。すべての根源は、佐藤さんのこんな言葉にあるのかもしれない。「これからは従来のつくりにこだわらない、日本の文化をファッションでつくることだ」。

Good President!<br />代表取締役社長であり、糸作家の佐藤正樹さん。オリジナルの糸をつくるため、すべての工程を一から見直し改良を続けた努力家だ。名門、日大山形高校時代にボクシングで腕をならした。

Good President!
代表取締役社長であり、糸作家の佐藤正樹さん。オリジナルの糸をつくるため、すべての工程を一から見直し改良を続けた努力家だ。名門、日大山形高校時代にボクシングで腕をならした。

「991」のヴェストの量産に入る前に各パーツをつくる。サンプルのパターンや風合いどおりに各パーツが上がっているかをチェックする。

「991」のヴェストの量産に入る前に各パーツをつくる。サンプルのパターンや風合いどおりに各パーツが上がっているかをチェックする。

ニット地を突合わせで縫う巧みなミシン縫製。縫製部分に厚みがない。

ニット地を突合わせで縫う巧みなミシン縫製。縫製部分に厚みがない。

Good Material!<br />写真中央の、他の糸に比べて繊細でヘアリーな糸が、世界有数のラグジュアリーブランドの糸のスペシャリストを唸らせた、52m/gの極細モヘア。「FUUGA」と呼ぶ。

Good Material!
写真中央の、他の糸に比べて繊細でヘアリーな糸が、世界有数のラグジュアリーブランドの糸のスペシャリストを唸らせた、52m/gの極細モヘア。「FUUGA」と呼ぶ。

2024

VOL.341

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