紳士服の永世定番
「ブレザー」概論
100年以上の歴史を辿り、現在の形になったネイビーブレザーは「いったいどんな洋服だったのか?」。メタルボタン付きの紺無地ジャケットと単に定義するのはあまりにも大雑把すぎないか?
そこで今回、ファッション業界の事情通への取材を通して、その歴史、そしてその服としての意味を、改めて考察してみることにした。
ブレザーは時代の流れのなかで、ファッションにおいてもアイコンになっていった!
19世紀の半ばに英国で誕生し、米国、そして日本でも親しまれてきたブレザー。これを紳士服の必需品にした立役者といえばアメトラの雄、ブルックス ブラザーズに違いない。

日本における総本山、表参道店の顔とも言える大平洋一さんによると、「ブレザーの起源には諸説ありますが、一つは1820年代に英国ケンブリッジ大学のボートクラブの学生たちによって着用されていた、ブレイズ(燃え上がる炎)のような真紅など、明るい色のスポーツジャケットに由来する説。もう一つが、英国海軍の軍艦ブレイザー号の乗組員たちが、ネイビーのダブルブレストジャケットを着用していたことに由来すると言われています」。

学生たちの制服、海軍の軍服という全く異なる2つのルーツをもち、それがやがて融合し、ネイビーブルーの生地に金のメタルボタンというスタイルが完成した。これが現在のネイビーブレザーとして定着したのである。さらに、大平さんはこう続けてくれた。
「ブレザーは1950年代になると米国アイビーリーガーたちにとって定番のファッションアイテムとなり、卒業後もエリートたちの間で愛用されたことで、晴れてビジネスワードローブの一員となっていったのです」。
独特な出自をもったことが、その用途をかくも広げ、時代を超えて愛され続けるブレザーの魅力となったのだ。
──1950~60年代──
[アイビー STYLE]
この流行をきっかけに日本でもブレザーが定着
クラシカルなスーツにボタンダウンシャツ、レジメンタルストライプタイを合わせるスタイルが1950年頃から流行りはじめ、“アメトラ”と呼ばれるようになる。
──1970年代──
[ブリティッシュ・アメリカン STYLE]
ポール・スチュアートやラルフ ローレンを筆頭とする、ニューヨークのブランドが台頭。アメトラに英国テイストをミックスしたスタイルが登場する。
──1980年代──
[プレッピー STYLE]
この頃、ブレザーにデニムやチノパンを合わせるなど、それまでのかっちりとしたアイビールックを少し着崩し、若々しいテイストを加えたスタイルが急増する。
──1990年代──
[渋カジ STYLE]
リーバイスの501やラルフ ローレンの紺ブレやBDシャツなど、渋谷に集まる若者が発信源となった独自のアメカジスタイル。この頃に一世を風靡した渋カジでも紺ブレは大ブームになった。

1950年代に入ると「アイビースタイル」の流行に乗って、ブルックス ブラザースのブレザーをアイコンとしながら世界中に波及していくことになった。
そのなかから、米国と英国をミックスした新たな解釈が生まれ、1970年代にラルフ ローレンが「ブリティッシュ・アメリカン」という新たなアメリカンスタイルを確立させた。
時代の流れとともに、ラペル幅やゴージの位置、ウエストシェイプのバランス感など、多少の変化はあれど、いつの時代のファッションとも愉しめる普遍性が、ブレザーにはあるのだ。
[MEN’S EX Spring 2025の記事を再構成]
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