M.E.が選ぶコートが巧い店
batak
ノーブルな気品あふれるアルスターコート

上品な服とは、まさにこういうことをいうのだろう。冬の湖のように澄み渡っていて、穏やかに薪の燃える暖炉のように温かみがある。アルスターコートと聞くと威厳にあふれた重厚なイメージをまず思い浮かべるが、この一着は成熟した男の厚みを十二分に体現しつつ、威圧的なところがまったくない。静かで、それでいて満々とした気品は貴族的とすら表現したいほどだ。
巷ではバタク=ブリティッシュと捉える向きも多く、実際に代表・中寺氏も「かつての英国ソフトテーラリングから影響を受けた」と話す。しかし、その作風は“鎧”に喩えられる英国仕立てとは一線を画していて、袖を通すと着心地の柔らかさに驚くはずだ。当然その仕立ては美観にも影響し、これが冒頭述べた静かなる気品を醸し出す一因となっているのである。
緩やかな弧を描いてフィットする肩、ゆったりとしたドレープを浮かべる裾広がりのシルエットはイタリア系コートとは明らかに異なる趣を宿し、それでいてイタリア服好きも思わず惹かれる魅力を放つ。なぜなら、バタクの根底に“エレガンス”という万国共通の価値が輝いているからだ。

Profile
Hiroyoshi Nakadera

1999年にBatakをオープンし、日本におけるモダンテーラーの先駆者として地位を確立する。洋服のみならずアートや建築も愛するジェントルマン。
お問い合わせ先
バタク日比谷店 TEL 03-5510-6902
関連記事はこちら:M.E.が選ぶコートが巧い店
[MEN’S EX Winter 2024の記事を再構成]
※表示価格は税込み。