ビスポーク通が明かす、「イタリア仕込み」な日本人靴職人の実力とは?

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仕立て靴

空前のビスポーク靴ブームに沸く現在だが、中でも強い輝きを放つのがイタリアで技を磨いた日本人職人。瑞々しい感性と精緻な技を両立させた彼らの活躍によって、イタリアのクラシック靴が今、再び脚光を浴びつつある。日伊クラフツマンシップの融合が見せる新境地が今、最高に熱いのだ!

ビスポーク通が明かすイタリア仕込み日本人靴職人の実力

加賀さんと阿部さん
右が加賀さん、左が阿部さん。

M.E. ここ数年で数え切れないほどの仕立て靴職人が台頭していますが、とりわけ存在感を発揮しているのがイタリア、それもフィレンツェやローマで修業した方々。なぜここまで“イタリア組”が増えているのでしょうか?

加賀 イタリアという環境が、もの作りの技と感性を磨くのにとても適しているからでしょう。特にフィレンツェは職人の街ですから、情熱と才覚のある人であれば分け隔てなく受け入れてくれます。

阿部 かたやローマは政治の街ですから、古くからの顧客に支えられた老舗が今も多く残っています。日本人職人は腕がいいですから、そこで認められて入門を許されて……という流れもありますね。

M.E. なるほど、ところで靴に関しても、スーツのように都市ごとの特徴の差ってあるんでしょうか?

加賀 それはもちろんあります。ローマ靴の特徴は、底がフラットで接地面が大きいこと。朴訥としていて、見方によってはシニアっぽいんですが、そこに味があるわけです。

阿部 フィレンツェは独特で、典型的なスタイルというのが決まっていない。作り手の個性が自由に発揮されているのが特徴です。イル ミーチョのようにアーティスティックで流麗な靴もあれば、アキラ タニのように力強さを打ち出した靴もある。

M.E. 同じフィレンツェ仕込みの日本人でも、ガラリと作風が変わるわけですね。ところで、イタリアで学んだ日本人シューメーカーならではの魅力とはなんでしょうか?

加賀 持ち前の技術の高さが、イタリアの自由さによって昇華されるところに妙味があるのではないでしょうか。イタリア人の気風は“エレガントならすべてよし”。そこにタブーはないのです。昔はパリやロンドンの街中でスエード靴など履こうものなら野暮だとからかわれたものでした。でもイタリアはそうじゃない。

阿部 フランコ・ミヌッチがスーツにタッセルローファーを合わせたのも、当時は掟破りでしたよね。

加賀 日本人は“いい靴を作ること”ばかりに集中しがちですけれど、ふと周りを見るとイタリア人たちは“雨の日をどうスマートに歩くか”を気にしている。そういう気風によって彼らの技術が昇華され、素晴らしい靴が生まれるんだと思います。

セブンフォールド代表
加賀健二

1964年生まれ。フィレンツェに自らのネクタイ工房とショップを構えイタリアの職人技を心から愛する。日本のクラフツマンたちとも深い親交を結んでおり、その審美眼は世界的にも有名。

レガーレ代表
マーケティングディレクター
阿部 浩

1967年生まれ。エディフィスの名物プレスを経て独立。加賀氏とともに日本におけるアット ヴァンヌッチの展開を牽引する。ビスポーク通としても有名で、数々の職人と親交あり。



[MEN’S EX Spring 2023の記事を再構成]

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