SUITS OF THE YEAR 2022
イノベーション部門
大学在学中に会社を興して以来、起業家の道を歩み、会社売却や事業の転換などのピンチを乗り越え、人工知能を活用したビジネスソリューションで多くの大手企業を顧客に開拓。平野未来さんの理想に向けて挑戦する姿勢に、本部門賞を授与する。
AIの力で世の中をトランスフォーム
シナモンAI 代表取締役Co-CEO
平野未来
平野未来(ひらの・みく)
1984年東京生まれ。東京大学大学院工学系研究科修了。在学中の2006年にネイキッドテクノロジーを創業。’11年に同社をミクシィに売却。’12年にシナモンをシンガポールで創業、’16年には日本法人を設立する。’21年より政府の新しい資本主義実現会議有識者構成員に就任。世界経済フォーラムが選出するヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)の2022年度クラスに選出。3児の母。
“大きな心で臨めば恐怖心を乗り越えてチャレンジできる”
平野未来さん率いるシナモンAIは、人工知能(AI)を活用したビジネス向けプロダクトを幅広く開発・提供している。単に技術を売るだけでなく、クライアントが目指す未来の実現に向けてどんなAI技術が有効なのか、まずはコンサルティングから始めるそうだ。
「お客様がどういう世界を作っていきたいのかを臨場感を持って把握しないと、DX(デジタルトランスフォーメーション)の良きパートナーになれませんから」
今では多くの大手企業を顧客に抱えるが、平野さんがここに至るまでの道のりは平坦ではなかった。大学院在学中に仲間と起業した会社はなかなか軌道に乗らず、5年で売却した。その後アジアの優秀なIT人材に目をつけてシンガポールでシナモンを創業。さまざまなアプリ開発を行ったが、すべてヒットせず、現地採用の優秀な人材を半分以上解雇することになった。
「このままでは会社も潰れるということで、’16年の春頃に私だけ日本に帰って営業に回ったんです。ちょうどAIがブームになり始めの頃です。学生時代にAIを勉強していたので、“うちはAIもできますよ”とお客様に言ったら反応がガラリと変わって(笑)。そこからですね、ビジネスAIに大きく舵を切ったのは」
そして’17年にAIを活用した文書読み取りシステムをリリース。この成功でシナモンAIは大きく飛躍したのだ。いまAI人材は業界で引っ張りだこだが、同社は独自の育成プログラムをベトナムで展開。常に優秀な人材を確保できているのも大きな強みだ。
そんな起死回生の大逆転を成し遂げた平野さんのチャレンジ哲学は、“大きな心で臨むこと”。
「チャレンジは誰だって怖いもの。でもそれは今の自分ごととして考えているから。次世代、さらにその先の世代のためと考えれば大きな挑戦にも怯まない。子どもを持ってその思いが強くなりました」会社経営に子育てと多忙な毎日だが、仕事の装いには常日頃からこだわっているという。
「きちんと見えつつも、世の中をトランスフォームすることを天命と考えているので、ちょっとだけイノベーティブな感じが醸し出せるような努力も(笑)。ただアレコレと服は持っていません。パーソナルカラー診断や骨格診断の結果を参考に、“間違いない”という組み合わせをシーズンに10セットぐらい回しています。時短に繋がりますし、コーデを失敗して仕事のテンションが下がってしまうこともありませんから」
「平野さんにとってのスーツとは?」
きちんと見せるのと同時に自己表現もできるアイテム
SCABAL × Re.muse(スキャバル × レ・ミューズ)
さりげなく感度の高さも示せるパープルカラーのスーツ
女性フィッターがオーナーのオーダーサロン「レ・ミューズ」で仕立てたスーツ。生地は名門「スキャバル」のサビルロウ コレクションから選んだ。双糸を高密度に織り上げ、滑らかさやコシがありつつ、シワになりにくい。「デザインも色も、完全に自分好みで満足しています」。
※表示価格は税込み
[MEN’S EX Winter 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)