「小さなステーションワゴン」ではない
ボルボV40とは、先ほども少し申し上げたとおり「ボルボの5ドアハッチバック」だ。ボルボ自身はそれを「コンパクトワゴン」と呼んでいる。
1997年に国内販売がスタートした初代のV40は、三菱自動車の「カリスマ」という小型セダンと車台を共用するコンパクトなステーションワゴンで、その生産もオランダにあるボルボと三菱自動車、そしてフォード合弁の工場「ネッドカー」で行われた。そして、まあハッキリ言ってさほどの人気モデルではなかった。
しかし2013年2月から国内販売された2代目V40(つまり今回紹介する最終世代)は、初代とはポジショニングを大幅に転換。「小さなステーションワゴン」ではなく「Cセグメントの5ドアハッチバック」に生まれ変わったのだ。ちなみに「Cセグメント」というのは、だいたいフォルクスワーゲン ゴルフぐらいのサイズ&車格のクルマを意味する自動車業界用語である。
それゆえ2代目ボルボV40のサイズはおおむねフォルクスワーゲン ゴルフと同程度であり、その質感も、ゴルフとおおむね競合するレベルのプレミアム感を備えるに至ったのだ。
ちなみに、20年ぐらい前でクルマに関する知識のアップデートが止まっている人は「ゴルフ=実用車の鑑」と思っているかもしれないが、ここ10年ほどのフォルクスワーゲン ゴルフは「小さな高級車」と化していることを、いちおうご承知おき願いたい。

last but not least(最後ではあるが、最小ではない)
で、そのように生まれ変わった2代目ボルボV40は、まずは1.6リッターのガソリン直噴ターボエンジンを搭載して2013年2月に登場。そして1週間遅れで「V40クロスカントリー」も発売。こちらはSUV風味のデザインとハルデックス製4WDシステムを採用した派生モデルで、エンジンもパワフルな2リッター直5ターボエンジンを搭載した。
その後はV40にも2リッター直5ターボが追加され、先進安全装備のクオリティも年次改良でどんどん向上していった。まぁこのあたりの話は自動車専門メディアではないためかなり端折らせていただくが、いずれにせよV40は長いモデルライフのなかでエンジンやトランスミッションを、そして安全装備などを順次刷新していった。
それゆえデビューから約6年がたった今もなお、V40は十分「いいクルマ」ではある。だが「いささか古い」ことは否めない。
ボルボ車のデザインと車台が大幅に刷新され、世界有数のプレミアムブランドと比べてもまったく遜色ないレベルに生まれ変わったのは、2016年に登場した現行型XC90からのこと。
現行型XC90以降に登場した現行型XC60およびXC40は、車台の出来も、クールきわまりない造形センスも、まさに「世界有数!」と言える水準にある。だが車台もデザインも「その前の世代」に属するV40およびV40クロスカントリーは、「決して悪くはないが、最新世代ほどでは……」というのが正直なところなのだ。
だが今回。東京から栃木県佐野市を経て日光の中禅寺湖に向かい、最終的には宇都宮市に到着するという“Petit Travel”の伴侶としてボルボV40の最終世代を使用してみたことで、よ~くわかったのだ。
微妙に古い「その前の世代」だからこそ、実は「絶妙」であるということが。
そして「残り物には福がある」というか、このクルマはまさに「last but not least(最後ではあるが、最小ではない)」である――ということが。

文/伊達軍曹 写真/柳田由人 編集/iconic