時折テレビで目にする、とある名画がオークションにて数十億円で落札されたというニュース。それを知り、多くの人は遠い世界の話と思うだろう。だが紐解けば、意外にも手の届く世界のようだ。
Auction【オークション】

【案内人】
株式会社サザビーズジャパン 代表取締役会長兼社長 石坂 泰章さん
1956年、東京都生まれ。三菱商事勤務後、18年間の画廊経営を経て、2005〜14年サザビーズジャパン代表取締役社長を務める。’14年からはアートアドバイザリー業務を提供。’18年に現職に。東京藝術大学非常勤講師。

「普段目にすることのない品を見られるだけでなく、
入札の勢いから今の時代で求められている感性を読み解く
ことが出来ます」( 石坂さん)
仕組み自体はヤフオクで知っている、もしくは体験したことがあるという人は少なくないだろう。しかし、世界的な名画を扱うようなオークションと聞くと、多くの人が「一部のお金持ちの世界」という印象を抱くはずだ。しかし、実はその門戸は多くの人に開かれていると、現存する世界で最も歴史のあるオークション会社サザビーズの日本法人で会長兼社長を務める石坂さんは語る。
「サザビーズでは、落札価格が数億円もする高額な作品ばかりを取り扱っている訳ではありません。皆さんにもお馴染みの数十万円の機械式時計や、ワインなども頻繁に扱っています」
オークションへの参加も紹介制ではなく、誰でも参加が可能。いざ落札する時のために身元や口座の照会など事前審査は必要だが、予想落札価格が数百万円程度のオークションへの参加ならば、手続きはさほど難しくはない。しかも、石坂さんによれば日本人がオークションを体験するには、今が絶好の機会なのだという。
「アジアにおけるサザビーズのオークション会場は香港にあるのですが、ここ数年は世界的に注目されている作品の多くが香港に集まってきています。香港旅行も兼ねて会場へ見学に行けば、旬なアートをひとところで観覧できます」
作品が集まる会場、出品される作品の種類、そして落札価格によって、ある程度世界の経済状況などが透けて見えるのもオークションの面白さ。香港会場が盛況なのは、いうまでもなく中国をはじめとしたアジア経済の目覚ましい発展に起因する。見学だけなら審査は要らず、入場料もかからないとあって、美術館感覚で訪れるのもいい。とはいえ、やはりオークションの魅力は、実際に入札してこそ理解できると石坂さんは語る。
「現在はインターネットでの入札も盛んですが、やはりオークションならではの緊張感は、生でしか味わえません。入札の微妙なタイミングだけでなく、オークショニアの口調や身振りひとつで落札価格が大きく動くことも、ままありますからね。見学するだけでも、楽しめると思いますよ」
次回の開催は10月。オークション開催の前に出品作品の下見会が開催されるのだが、そのタイミングで訪れるとすべての作品を見学することができる。ちなみに、服装に規定はない。近年は高額オークションでも、ラフな装いも見受けられるがM.E.読者なら、ジャケットを着て行きたい。
実は『ニューヨークタイムズ』など欧米紙では、毎週アートビジネスの記事が掲載される。ここ日本でもビジネスにアート的な発想を取り入れるという考え方が注目されるなど、ビジネスマンにとって、オークションの世界は一見の価値があるようだ。