女性作家の揺れる魂を「ナラティブ」をキーワードに感じてみる

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近頃エグゼクティブの間でますます話題のアート。知識を広げ、ビジネス会話を広げるためには、アートの「用語」にも精通しておきたい。

ナラティブ
「不確かな旅とは人生そのもののこと」(塩田)。目的地がわからず揺れる人生を、赤い糸に覆われた空間に漂う船の存在で表現したインスタレーションが美しい、塩田の代表作。
塩田千春《 不確かな旅》 2016年 鉄枠、赤毛糸 展示風景:「不確かな旅」 ブレイン|サザン(ベルリン)2016年 撮影:Christian Glaeser

ⅣナラティブⅣ【ビジネス”ART”会話#16】

“生きる目的”を問い続ける女性作家の揺れる魂に共鳴

聞きなれた「ナレーター」「ナレーション」とも同じ語源の「ナラティブ」という言葉は、私たちが語って表現するものすべてを指す。例えば日記、手紙、メモに綴られたことも「ナラティブ」になる。

独・ベルリン在住で国際的に活躍するアーティスト、塩田千春(1972 −)は、世界中から集められた「鍵」や「靴」、そして「糸」といったナラティブな素材を使って、他人の記憶を紡ぐように作品を作っている。ある展覧会では、誰かに感謝の気持ちを伝える2400通ほどの手紙を公募で集め、それらを黒い糸で繋ぎ、空間全体を構成。その糸には目に見えない人と人との繋がり、生命の連鎖といった多重の意味が込められていた。

本展でも森美術館の広大な空間に、血管を思わせる赤色や、宇宙にも見える漆黒の糸を張り巡らせた作品など、大規模なインスタレーションが6点展示される。私たちは作品の中を自由に歩くことで、そこに漂う、見知らぬ人のナラティブなエネルギーが充溢したアートの世界に没入できる。

「魂がふるえる」という副題は、「ある感情が言葉にならずに心の内側でふるえている状態のこと」と塩田は語る。「編まれた糸は複雑な心を表しています。そして私たちは、船のようにいつどこで終わるかわからない人生の航海を続けているという思いで制作しました」。

「生きる意味とは何か」。ストレートな問いかけをする塩田作品から、自分の心の内側を探ってみては。


東西統一後ベルリンで集めた窓枠の作品

ナラティブ
塩田千春《 内と外》 2009年 古い木製の窓、椅子 展示風景:ホフマン・コレクション(ベルリン)2009年 撮影:Sunhi Mang

旧東ベルリンで集めた窓枠を使ったインスタレーション作品の背景には、1989年のベルリンの東西統一がある。塩田は東側の都市再開発で捨てられた窓枠を集め、窓を使った作品を作り始めた。作品を見ると、同じ言語と文化を持つ人々が、西側と東側に分断され暮らしていた街があったという歴史を思いださせる。この窓枠は家の内と外の境界だけでなく、人の心にできる狭間も象徴している。


スーツケースのように旅が続く人生の意味を考える

ナラティブ
塩田千春 《集積— 目的地を求めて》 2016年 スーツケース、モーター、赤ロープ 展示風景:「アート・アンリミテッド」アートバーゼル(スイス)2016年 撮影:Atelier ChiharuShiota

ベルリンの蚤の市で集めた約400個のスーツケースが天井に吊るされ、振動し続ける作品。あるとき塩田が古いスーツケースを開けると、「旅の時に必要なもの」と書かれたメモと過去の新聞が入っていたという。その持ち主の存在を考え始め、この作品は生まれた。スーツケースが象徴するものは、旅だけではなく、人生、家、時間。「私たちはどこへ向かおうとしているのか」が問われる作品。


世界の現代美術ファンが注目する女性作家

ナラティブ
撮影:Sunhi Mang

塩田千春(1972-)は1996年よりドイツを制作活動の場に定め、国際的に著名な現代美術の女性アーティスト、マリーナ・アブラモヴィッチとレベッカ・ホーンに師事した。人間の複雑な心理や関係性を表すような糸を張り巡らせた大規模な空間インスタレーション作品は、国内外で高い評価を得て、海外における年間の展覧会数は日本人作家のなかで群を抜く。今回は一昨年再発した重篤な病の治療といった試練を乗り越えて、過去20年間の芸術活動の集大成となる展覧会を実現させることとなった。


DATA

『塩田千春展:魂がふるえる』

会期:6月20日(木)〜10月27日(日)
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1)
開館時間:10時〜22時(火曜日のみ17時まで 10月22日は22時まで
*入館は閉館時間の30分前まで)会期中無休
入館料:一般1800円ほか
お問い合わせ:ハローダイヤル
TEL:03-5777-8600



※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2019年7・8月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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