そこに、至高の王道あり。
「贔屓」。中国の故事にまつわる語源がある。一旦その出自は置いておくとして、自分が常時愛用し信頼できる店があるかを問うてみたい。店に入った瞬間に「〇〇さま、いらっしゃいませ」と声掛けされるか否か。あるいは決まった席に案内されるかどうか、など。決して常連ぶるのではなく、自分をよく知ってもらっていることで得られる、心地よさがあることが、”贔屓”の醍醐味だ。例えば理髪店。完全に無防備な状態で横たわり、ハサミと剃刀に身を委ねるのだから、信頼なくしては成立しない。
地元に信用できるすし屋を持つこともまた然り。都会の名店もいいが、ふらりと顔を出せば自分の好みを熟知し満足させてくれる店こそ、自分専用の名店と呼べる。こうした贔屓の店を見つけるためには、これはと思った店に足繁く通うこと(それは同時に店側にもあなたを評価する自由があると心得るべきだが)。自分だけのルールではない、その場のルールを会得し溶け込んでこそ初めて、店から”ご贔屓さん”と認定されるのだろう。ちなみに贔屓の語源は、重い荷を背負うという意味から転じて、特定の人を助けるために力を入れるという意味に。なるほど、そこに大切なポイントが読み取れる。
Sushi Restaurant
わがままもきいてくれるうちの町のすし屋
門前仲町は深川不動尊のすぐ傍に店を構える「すし三ツ木」。ここの名物として、すしよりまず先に挙げられるのが、大将の三ツ木新吉さんだ。もはやこのお店の、というよりこの町の大将。ここに50年近く構える同店には、幼き頃から通う常連客も多く、すしを食しながら人生相談をしにやってくる、そんなお客が多いのだとか。地元の祭りにも積極的に協力する大将は、まさに町みんなの贔屓として愛される。
すし三ツ木
住所:東京都江東区富岡1-13-13
TEL:03-3641-2863
※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2019年7・8月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)