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胃がんの早期発見率の増加で、
体への負担が小さい治療がますます発展

 さて、胃内視鏡検査の普及により、胃がんの早期発見率が増え、”治る”胃がんはますます増えていくことでしょう。胃がんは早期発見により早期治療ができれば95%以上が治る時代です。しかも、発見が早ければ早いほど、より体への負担が小さい治療法で根治できます。すなわち、医師が自らの胃がん検診として好む胃内視鏡検査の技術は、早期がんの治療にも応用されています。

 胃がんがまだ小さくて周囲のリンパ節への転移が疑われない場合は、内視鏡を用いた内視鏡的粘膜下層剥離手術(ESD)により、体にメスを入れることなく胃がんの根治治療が可能です。リンパ節転移の可能性が疑われても早期がんであれば、傷が小さくて済む腹腔鏡による手術により、胃の切除後も早期に社会復帰が可能になっています。早期で発見すればするほど、切除範囲が少なくて済み、その方法もより体に負担が小さいものが選択できるのです。

 特に、胃食道接合部がんなど胃と食道の両方にまたがるがんの場合は、発見が遅れて広く切除しなければいけなくなると、胃と食道の2つの臓器の切除が必要になり体に大きな負担が余儀なくされます。その治療には数週間以上の入院が必要で、手術後は食事や生活の面で大きく制限を受けることになります。

 一方で、早期発見ができれば胃食道接合部がんであっても、内視鏡手術による根治治療が可能になり、数日の入院で社会復帰でき、治療後の食事や生活制限はほとんどありません。診断、治療技術が進化している現代であるからこそ、早期発見のために定期検査を受ける意義が極めて大きいと言えるでしょう。

 むろん、早期発見ができず、不幸にも進行がんで発見された場合には、手術の規模は非常に大きくなり治療後の負担は甚大です。がんの進行が甚だしい場合は、根治的治療法である手術すら実施できなくなります。このような状態には陥りたくないものです。

20代でも発症、早期発見も難しい
「スキルス」という厄介な胃がん

 胃がんの検査法や治療法が極めて進化した現在、「胃がんは治る病気で恐れるに足らず」と言って良いのですが、例外もあります。「スキルス胃がん」と言って、原因が明らかではなく、粘膜の下を這う厄介なタイプの胃がんがあります。

 胃がんの中での発生頻度は1〜5%と比較的少ないのですが、20代でも発症します。発見が難しいために相当に進行した状態で見つかることがほとんどで、根治的治療は極めて難しいがんです。膵臓がんと並んで代表的な「難治がん」と位置付けられており、私たち医療従事者もその管理には非常に悩まされています。その治療法は、根治的治療としての手術ではなく、延命を目的とした化学療法にならざるを得ません。

 スキルス胃がんに対しては、新たな標準治療として期待される免疫チェックポイント阻害剤による治療や、これからの治療である遺伝子治療など、有効な治療法の開拓や効果検証が求められます。

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