このタイミングで改めて「岡本太郎のパブリックアート」に注目が集まる理由とは?

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近頃エグゼクティブの間でますます話題のアート。知識を広げ、ビジネス会話を広げるためには、アートの「用語」にも精通しておきたい。

パブリックアート
下着姿で巨大な油粘土の塊と格闘する岡本太郎。初めて挑戦した彫刻は大きすぎてアトリエから出せなかったという逸話も。当時のアトリエは記念館にそのまま保存されている。
写真/岡本太郎記念館

ⅣパブリックアートⅣ【ビジネス”ART”会話#14】

太陽のように熱く、大衆に芸術を捧げた男

「パブリックアート」とは、人々が自由に出入りできる公共の場に設置された芸術作品のこと。その形態はオブジェ、壁画などさまざまで、その空間に新たなエネルギーを生みだす力を持っている。

日本万国博覧会(1970)のテーマ館の一部として建てられた「太陽の塔」。その作者として知られる前衛芸術家・岡本太郎(1911-Ⅲ96)は、パブリックアートの元祖ともいえる作家だ。彼は生涯「公共空間になぜアートが必要なのか」と自問し、その場所で芸術を見せることの意味を考え抜いた。取り組んだパブリックアートは、84歳で没するまでに国内だけで70ヶ所140作品に上る。本展ではそんな「太陽と同じように、芸術はすべての人に無償で与えられるべきもの」という信念のもと制作された、彼の作品を映像、写真、模型などで紹介する。

岡本太郎のパブリックアートの特徴に「顔」がある。彼は生きている人間が持つ喜怒哀楽の表情を、”生命の象徴”として考えた。当会場にも座面に「顔」がついた、座っていいのか悩んでしまう椅子がある。「ユーモアに共感し民衆と共に大笑いする芸術家でありたいと太郎は願っていた」と、キュレーターの大杉浩司氏(川崎市岡本太郎美術館学芸員・岡本太郎記念館客員研究員)はいう。座ることを拒む「顔」のある椅子に、「なんだこれは?」と笑いながら座る。これが岡本太郎のパブリックアートの楽しみ方なのだ。


記念館の庭に生い茂る植物と彫刻の融合に、太郎のスピリッツを見る

岡本太郎記念館
岡本太郎記念館

記念館の庭には、伸び放題の熱帯植物に交じって、岡本太郎の奇抜な発想の彫刻作品があちこちに置かれている。その中に吊り下げられた鐘は、名古屋市の久国寺に奉納した梵鐘をスケールダウンしたもので、実際に木槌で叩くことができる。深みのある心地よい音が響き渡るので、ぜひ試してほしい。そのほかの庭にある作品も自由に触れることができるので、作品から太郎パワーをチャージしよう。


亡くなるまで制作を続けたアトリエに漂う、芸術家の気合を感じる

岡本太郎記念館
岡本太郎記念館

1954年から’96年に亡くなるまでの約40年間、いつも制作をしていたアトリエが常時公開されている。開放的な高い天井と窓の光が印象的な空間だ。大きな棚には無数のキャンバスが積まれ、使い込まれたデスクには愛用の絵筆や刷毛が置かれ、当時の様子を偲ばせる。仕事部屋の片隅にあるピアノやゴルフバッグにも注目。多趣味で、恋愛にも気合と情熱を傾けた男、岡本太郎の生き様が垣間見られる。


坂倉準三が設計したユニークな自宅兼アトリエ

岡本太郎記念館
岡本太郎記念館

南青山・骨董通りの裏路地にある岡本太郎記念館。1954年、近代建築の巨匠、ル・コルビュジェの愛弟子である坂倉準三に、友人だった岡本太郎が自宅の設計を依頼。その建物を保存し、記念館として利用している。シーズンごとに変わる企画展示スペースは、空中に浮いているような回廊のある設計。昭和レトロな雰囲気が漂う館内には、愛用の小物のほか、岡本太郎の等身大のマネキンも展示、彼の魂の爆発を感じるエナジースポットでもある。芸術家・岡本太郎の、非日常的な、しかしリアルな暮らしぶりを感じてほしい。

DATA

『太陽の芸術 —岡本太郎のパブリックアート—』

会期:〜 6月23日(日)
会場:岡本太郎記念館(港区南青山6-1-19)
休館日:火曜日(祝日の場合は開館)
開館時間:10時〜18時(入館は17時30分まで)
入館料:一般620円ほか
お問い合わせ:岡本太郎記念館
TEL:03-3406-0801



※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2019年5月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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