いでよ、IRONシェフ!「生地の鉄人」
スーツの達人たちによる、とっておきの生地談義

ニッポンの生地賢者お三方の知見を拝借!
ここでは目線をちょっと変えて、スーツにとっての素材、”生地”の話。語るのは業界を代表するお三方。”生地の鉄人”たちのおりなすとっておきの話をご賞味あれ。
スーツを料理に例えるならば、生地=素材。どんなに調理が巧みでも、素材が自分の用途に合っていなければ台無しになってしまう。ではその”素材”はどう目利きすれば…?ということで、各方面で辣腕を振るうお三方にM.E.から質問を投げかけ、オススメの生地を選んでいただきつつ、その生地の持つ魅力について存分に語っていただく。その話の行方は?

パーソナルオーダーの鉄人
麻布テーラー クリエイティブディレクター 上月 剛氏
パターンオーダーを日本のビジネスマンに広めた『麻布テーラー』にてバイイングと企画を担当。英国をはじめ世界各地を飛び回る。「英国生地には一家言あります!」

ミラノテーラードの鉄人
ペコラ銀座 佐藤英明氏
1988年よりパリで、1990年からはミラノに移り住み、名テーラー「マリオ・ペコラ」で修業を積む。帰国後に「ペコラ銀座」をオープン。「個人的には仕立て映えする肉厚生地が好き」

スーツトレンドの鉄人
三越伊勢丹バイヤー 鏡 陽介氏
本誌の生地企画におけるご意見番として、数多くご登場。ミラノの生地展に足繁く通い、国内外の生地メーカーに精通する。「お二人とご一緒で緊張します(笑)」
最後に…とっておきの生地を教えてください
佐藤 これもまた、今はもう生産終了になってしまった、往年の”いい生地”です。私の父も好きだったこともあって、お店では結構な数をストックしています。
鏡 『フィンテックス』ですね!
佐藤 触った感じではあまり選ばれないタイプなんですが、出来上がった際に重厚感が出るのがいいんです。だから30代で作っても60代まで着られるスーツになります。
鏡 僕も”長く着られること”を考えて、『ドラッパーズ』のコットンツイル。こちらはエイジングするのがいいんですよね。
上月 麻布テーラーではメーカーを横断して独自に編集した『ゼログラヴィティ』というラインを提案していますが、こちらはフランネルながら軽さが際立つ冬物です。
鏡 お店では売れるんですか?
上月 評判はすごくいいです。軽さは今後のキーワードになり得るかもしれませんね。
佐藤 確かに。うちでも『ロロ・ピアーナ』のライテスト(※6)が評判急上昇中です。
鏡 実は今、日本橋三越本店でレダのシャツ生地をスーツに仕立てるのが、スーツを普段着にしている熟年世代の方に受けているんですよ。これもその流れですね。
佐藤 時代のニーズに即したものだったり、時代を超えて愛されるものだったり幅広い選択肢があるのが生地選びの魅力。ある意味、それは自分のライフスタイル選びの側面もあると思います。だからこそ、生地選びを存分に楽しんでいただきたいですね。

「PU混の生地は仕立てにくいですよね(笑)」(上月)
「ただ、夏に向く速乾の化繊混は賛成です」(佐藤)