航海を支えたブレゲのマリンクロノメーター
海洋国家でもあるフランスの、各地の港街には、数ヶ所の海洋博物館があるが、ここパリのそれはトロカデロのシャイヨー宮殿の一角にある。
セーヌ川を通じ、内陸のパリにワインや様々な荷物を運んで人々の生活を支えた、小さな帆船をはじめ、歴史的な帆船の模型や、フランス海軍の海戦を描いた絵画や、『皇帝の端艇』などの実物がそこにはある。それは1810年にナポレオン一世のために建造された、カノ・ドゥ・ランプルールと呼ばれる大型ボートで、船首飾りにネプチューンなどの彫刻をもつ、美しい装飾がほどこされた荘厳な船だ。
そしてこのミュゼにも、ブレゲ工房が作ったマリンクロノメーターをはじめ、海洋世界や海軍のための機器が、たくさん展示されている。
フランスの誇る航空母艦や、戦闘機、またパイロットの服装など、珍しい展示品が多いが、現代のブレゲ社が、それらの展示に協力しているのだった。
海の上では、天体や時間を読むことが大事
ガラス球の中にあるのは、太陽を中心とした太陽系の天体の動きを、機械仕掛けで観賞する天球儀=プラネタリウムだ。地球の周りを月が公転する精密なもの。昔の時計師たちの中には天文学を追求した人がたくさんいた。
この博物館にはブレゲ時計工房製のマリンクロノメーターの数々や、海軍所属の航空機部隊の歴史展示などに、ブレゲが資料提供など様々なサポートをしているという。
海洋博物館
住所:17 Square du Trocadero, 75116 Paris
ポンピドゥーセンターの北あたりに。海洋博物館は少し離れて、エッフェル塔とセーヌ川を挟んで向かい側のトロカデロ公園内に
[MEN’S EX 2017年9月号の記事を再構成]
撮影/Ikuo Yamashita 取材・文/松山猛