時計好きであれば、昨年ブライトリングの経営体制が大きく変わり、新たなCEOに数々の時計ブランドで辣腕をふるったジョージ・カーン氏が就任したことをご存知かもしれない。果たしてクロノグラフの名門はこれからどんな方向に向かうのか？ 多忙なスケジュールを縫って先頃来日したジョージ・カーン氏に、緊急インタビューを行った。
PROFILE 1965年、ドイツ・デュッセルドルフ生まれ。クラフトゼネラルフーズ（現モンデリーズ・インターナショナル）でキャリアをスタートさせ、1992年にタグ・ホイヤーに移籍し、ウォッチ業界に参入。2002年から2016年までIWCのCEOを務め、同ブランドを大きく躍進させた。17年７月から現職に。
私の仕事は”ブランド再建”ではありません
——ブライトリングというブランドの印象を改めてお聞かせください。
ジョージ・カーン氏：CEOに就任して最初の発見は、ブライトリングは他のブランドでは見られないほど豊かな歴史を持っているということ。クロノグラフの名門としてさまざまな技術革新を成し遂げ、長年航空分野と密接な関係にあることなどは有名ですが、それ以上に深い歴史とストーリーがあり、じつに多彩なアーカイブを有しています。ダイバーズ分野はもちろん、それ以外にもセーリング、スキー、モータースポーツ、気球など多くのスポーツにも深く関わり、宇宙に初めて行ったクロノグラフという栄誉にもあずかっています。
またマイルス・デイヴィスのようなミュージシャンから、多くの有名アクターまで各時代のセレブリティに愛されてきたブランドでもあり、あのジェームス・ボンドも着用しています。現在は屈強なモデルのイメージが強いようですが、「トップタイム」のようなエレガントでブレミアムなモデルも手がけ、数多くの女性に愛されたドレッシーなモデルも多数輩出しています。こうしたブランドのDNAをより多くの人に伝えるのが私の役目だと感じました。
ブライトリングの歴史を彩ったアーカイブモデル（写真15枚）
——ブランドの再建がご自身の役割ということでしょうか。
ジョージ・カーン氏：いえ。ブライトリングは世界で４番目に大きなブランドであり、すでに非常に強いブランド力があります。とくにアメリカ、イギリス、ドイツ、日本においては大成功を収めています。ですから私がCEOとしてなすべきことは決してブランドの再建ではなく、すでに有している財産、たとえば先ほど説明したような航空分野以外の歴史やストーリーにも今一度スポットを当て、ブライトリングを次のステージに導くことだと思っています。
——先頃「ナビタイマー 8」が発表されましたが、これはどんなコレクションですか？
ジョージ・カーン氏：パイロットウォッチの新しいコレクションです。デザインはブライトリングがかつて手掛けた飛行機用のオンボードクロックからインスパイアされており、従来のナビタイマーの特徴である回転計算尺は備えていません。さらにクロノグラフ以外のモデルも展開するため、戸惑うファンもいるかもしれませんが、じつはナビタイマーの歴史を振り返ると、回転計算尺のないモデルや、クロノグラフではないモデルも作られています。もちろんナビタイマー8は、従来のナビタイマーにとって変わるものではありません。ナビタイマーはこれからもブライトリングの主力であり、アイコニックな製品。そこに新たに加わった仲間と認識してください。
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