近頃、エグゼクティブの間でますます話題のアート。知識を広げ、ビジネス会話を広げるためには、アートの「用語」にも精通しておきたい。
今月の用語 “リレーション” 【ビジネス”ART”会話#10】
“リレーション”
破壊から創造を生み出す社会を再起させるアートの力に注目
ラインやツイッターといった、SNSなどのネット上での付き合いが頻繁になり、現実での人間関係の難しさを実感することはないだろうか。
「リレーション」というアート用語は「関係/関係性」を示す言葉。例えば、アーティストが被災地に赴き、そこに暮らす住民と関わり、一緒に作品を制作する”人々とつながる”こと。地元の歴史と作品の間にある文脈的な”関係性”を作ること。そういった目に見えない芸術活動すべてを、「リレーション」というアートとして考える。
本展には「アートが社会においてどのような役割を果たすことができるのか」というテーマで、震災や不況などの災禍を被った私たちと社会の「リレーション」を、マスメディアとは違った視点で映しとった作品を集めている。より良き社会へのヴィジョンを提示するのは現代アートの役割のひとつ。会場は”どうすればよい未来を描け、人が社会と関わるエネルギーを増幅できるか”という、鑑賞者とアーティストとの「リレーション」を結ぶ場になるだろう。特に、映画やドキュメンタリーの監督としても著名な大御所アーティスト、アイザック・ジュリアンの、アートと経済の関係を鋭くえぐる映像は必見。
オノ・ヨーコとジョン・レノンの永遠のスローガンが六本木に出現
六本木ヒルズ内(美術館外)でもオノ・ヨーコの作品《戦争は終わる》のビルボードを展示。ベトナム戦争が激化していた1969年に、タイムズスクエアをはじめ世界11都市で掲示され、その後も世界各地で行われているプロジェクト。
被災地での人との関わりが アートプロジェクトに発展
倒壊した家の解体作業を手伝ったアーティストと家主たちとの交流から生まれた作品。被災した地域のシンボル、灯台を修理し、総勢500人の力で「引き興し」された瞬間、複雑な住民の気持ちが緩くつながっていく。
経済のカタストロフ(大惨事)に目を向けた映像作品は見逃せない
証券会社リーマン・ブラザーズが倒産し、世界が金融危機に陥ったことはアートの世界にも影響を与えた。投資とアート・マーケットの密やかな関係を赤裸々にする、5つのエピソードからなる映像に思わず身震い
DATA
『カタストロフと美術のちから展』会期:開催中〜2019年1月20日(日) 会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー53階) 開館時間:10時〜22時(火曜日は17時まで。2019年1月1日は22時まで。いずれも入館は閉館時間の30分前まで) 会期中無休 料金:一般 1800 円ほか お問い合わせ:ハローダイヤル TEL:03-5777-8600
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[MEN’S EX 2019年1月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)