旅行に誘われたけど行きたくない、そんなとき何て言う?【大人の言い訳講座】

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大人の言い訳は、相手への誠意でありやさしさであり愛です。何かとややこしくてままならない大人の日々ですが、適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスをできるだけ少なくしてしまいましょう。

言い訳のイメージイラスト

石原 壮一郎さん

講師
石原 壮一郎さん

1963年三重県生まれ。大人の美しさと可能性を追求するコラムニスト。1993年に『大人養成講座』でデビュー以来、日本の大人シーンを牽引している。近著に『本当に必要とされる最強マナー』『9割の会社はバカ』など。

旅行に誘われたが行きたくない

それなら仕方ないかという納得につながれば、真偽はどうでもいい

幸いなことに職場の人間関係は、とても円滑です。同僚のひとりが、せっかく夏だしと思ったのか、いきなり「みんなで旅行に行こうよ。高原とか」と言い出しました。あちこちから「行こう行こう!」「ヒャッホー!」と好意的な反応が寄せられています。

この雰囲気では、とりあえず「いいねえー」と賛成するしかありません。しかし、メンバーは好きだけど、いっしょに旅行に行きたいかとなると話は別。本音としては、あまり気が進みません。ここもまた、言い訳の出番です。

正直に「気が進まない」「いっしょに旅行はちょっと」と言って参加を断わるのは、大人として論外。その後の人間関係に厄介なシコリを残すし、参加するメンバーの浮かれ気分に水を差すことになります。かなり未熟で身勝手な断わり方と言えるでしょう。

たとえば、日程が具体的になってから、実家の法事や親戚の結婚式など、外せない用事を理由に「残念だけど行けない」という流れに持っていくのは、いわば定番の断わり方。しかし、それだと何かの拍子に日程が変更になったら、もう逃げられません。遠出をしたフリをするなど、嘘を無駄に重ねる必要も出てきます。

この状況では「それなら仕方ない」と納得してもらいつつ、深くは突っ込まれない言い訳を提示できるかが、大人としての勝負どころ。行き先が高原なら、

「2年前にスズメバチに刺されて、今度刺されると命に関わるらしいし、自然の中に行くと恐怖心がよみがえってきそうだから、残念だけど山は……」

と言っておくのはどうでしょう。

「そんなの気にせずに行こうよ」と言う人は、まずいません。行き先が海なら「2年前にクラゲに刺されて以来、潮の香りがトラウマになっちゃって……」とアレンジすればOKです。

聞く側が、仮に「ちょっとウソ臭いな」と感じたとしても問題はありません。一種の「弱み」を言い訳にしているところに、決意の固さや大人の配慮を感じ取って、「そこまでして断わりたいなら仕方ない」と、あたたかい気持ちで受け止めてくれるでしょう。


言い訳の極意

たとえウソ臭くても、熱意や工夫が伝われば、黙って「納得」してもらえる——。
言い訳は、時に聞く側との共同作業でもある。




[MEN’S EX 2018年9月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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