海外ではグローバル企業の経営者たちが、自社の社員に経営学ではなく、アートを学ばせているという。アートが独創的な発想を生む新鉱脈として期待されているのだ。この潮流、日本にもすでに届いている。
初心者でも気軽に基本から学べる
アート学校MAD(マッド)
AITが主催する現代アートの教育プログラムMAD。写真は通年サロン「アート・パートナーズ」の様子。約1年間、月1回のペースでアートとビジネスの新しい可能性について学ぶ。2018年も開講の予定だ。この他にもアートの見方を学べる短期講座や1 日講座など多彩なプログラムが用意されている。
http://mad.a-i-t.net
AIT理事長 塩見有子さん
現代美術に誰もが簡単に触れられる場を作ろうと、2001年に仲間と共にNPO法人「AIT(エイト)」を設立。初代代表に就任する。
アートの刺激で思考回路を組み替える
アートが仕事に必要な発想力を磨く——データ重視のビジネス戦略が行き詰まりを見せるなか、アートの発想に活路を見いだそうとする動きが広がりつつある。事実、アートに誰もが触れられる場作りを行っているNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ、通称AITの塩見さんによれば、AITが主催する現代美術の教育プログラムにも、アートから受けた刺激を仕事に還元したいと考えている参加者が少なくないという。
「アーティストは、結びつかないと思われていたもの同士を軽々と結びつけるし、固定観念を壊すことを躊躇なくやってのけます。作品や発言、社会の捉え方を通じて彼らの発想から刺激を受けることが、自分の思考回路を組み替えることに繋がるのだと思います」
既成概念に凝り固まった思考回路をアートによって分解し、改めて組み替えること。その取り組みは、仕事に必要な発想力をアートで磨くことにほかならない。
第一線で活躍するビジネスマンが語るアートを知る意義とは?
マネックス証券 代表取締役社長 松本 大さん
「私にとってアートは朝食や音楽がそうであるように、生活していく上で欠かせないものです。なかでもコンテンポラリーアートは、作家と鑑賞者が同じ時を生きているが故に、独創的なようでいて、その実、鑑賞者のことを非常に気にしていたりします。ビジネスにおけるサービスの作り方と共通する部分があってとても興味深いですね」
投資会社勤務 棟田 響さん
「私は昨年の『アート・パートナーズ』を受講しました。講師が本当に有名な方ばかりで、それこそ本で読んだりしていた方のお話を聞いたり、質問したりできたのが面白かったですね。また、アートを軸に交流の輪が広がったのも収穫でした。仕事ではお目にかかることのないような方々とお会いできて、刺激を受けることが多かったです」
[MEN’S EX 2018年2月号の記事を再構成]
撮影/小林孝至 文/星野勘太郎