シリコンビーチの新しい街【松山 猛の道楽道 #012】

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松山 猛の道楽道(どうらくどう)

シリコンビーチとは、近年ロサンゼルスに再開発された新しいエリアで、サンフランシスコ近郊のシリコンバレーから移動してきた企業が集う、新興タウンのことである。

ヴェニス・ビーチの内陸部の、一大観光地のマリナ・デルレイや、またロサンゼルス国際空港にも程近い絶好のロケーションに、忽然と出現した近代的なこの町には、アマゾンや映画会社のフォックスなど、大きな企業がたくさん拠点を置き、またそこに勤める人々の住宅が建ち並んでいる。

松山 猛の道楽道(どうらくどう)
フォックスの前庭に立つ巨大オブジェは、KAWS(カウズ)というアーティストが描くキャラクター。シュプリームとコラボしたり、ユニクロからTシャツが発売されたりしている。

土地がいっぱいのアメリカでも、これほどの大開発がどうして可能だったかといえば、実はこの町の土地は、かつてハリウッドの大プロデューサーとして、数々の名作映画を送り出し、さらに大型旅客機の開発に熱中するあまり、稀代の変人として知られたハワード・ヒューズの、プライベート飛行場の跡地を利用したロケーションなのだ。

だから細長く伸びるこの街にはかつての滑走路上につくられた大通り「ランウェイ」という道路があったりするのがおもしろいのだ。
高級食材を扱う「ホールフーズ」というスーパーマーケットや、様々なレストラン、自転車店、お洒落なペット用品店などが並ぶこの町のコアというべき一角などは、これまでの少々古びたロサンゼルスとは全く異なる、新しさの魅力にあふれたニュータウンを構成している。

松山 猛の道楽道(どうらくどう)

ホールフーズを覗いてみると、食肉売り場の一角に「ベーコン・バー」なるものがあり、様々に加工されたベーコンが並んでいたりする。
多くの人がそのプロフェッショナルの手がかかった食材を買って帰り、サラダに混ぜたり、卵料理に添えたりするのだろう。
これなら失敗はないし、食べたいものが実現できる。アメリカ的な合理主義の一端を見る思いがした。

今、ロサンゼルスには、IT企業などがたくさん移動してきていて、そのために家賃がとても高騰していると聞くが、この一角にすむのは新しいステータス・シンボルとなりつつあるようだ。

松山 猛の道楽道(どうらくどう)

松山 猛 Takeshi Matsuyama

1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。

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