三人娘と猫のいる誂え靴店【松山 猛の道楽道 #008】

NULL
Facebook
Twitter
友だち追加
松山 猛の道楽道(どうらくどう)

“ラ・カルツォライア”は、マンニーナ親方の愛弟子、松岡祥子さんとその仲間が営む誂え靴店だ。
マンニーナ工房からほど近いこの店では、松岡祥子さん、岡田典子さん、黒澤真紀さんの三人娘が、仕事に精を出すのを三匹の猫が見守っている。 名古屋出身の松岡さんは高校卒業後、イタリアを一人旅したとき、靴作りの世界に興味を抱いたのだそうだ。

そして再びイタリアにやって来て、フィレンツェの製靴学校で基礎を学んだあと、マンニーナ親方のもとを訪ね弟子となり、その工房で12年の修業を積んだ後に独立をした。
以来マンニーナ親方も松岡さんを、まるで自分の娘のように可愛がり、しかし仕事に関しては厳しく教え込んでいた。

松岡祥子さんはこんな靴を作っている(写真4枚)

その当時はかつてマンニーナ親方とともに仕事をし、またそののちに伝説のブランド”アルファンゴ”などで仕事を続け、リタイアした後も何かとマンニーナの店に出入りしていたベテラン職人の仕事ぶりからも、様々な技術を学ぶ機会を得たと思う。 あの時代に彼らは、ノルベジェーゼなど、特殊な技法の底付けなどを、助っ人として仕事をしていたものだった。

ある時、注文した靴の一足を「これはショーコが縫い上げたんだよ、なかなか良い出来でしょう」と、親方が自慢げに話していたのを思い出す。それはパイソン革で誂えた一足で、親方が自慢するのが納得できるほど、とても丁寧に縫い上げられていた。
松岡さんたちは靴学校の同級生で、松岡さん以外の二人は日本とイタリアを往復しながら仕事をしているという。岡田さんは広島の地方都市で、足に問題を抱える人のための靴を作っていそうだ。

この店の誂えは、男もののマッケイ技法のもので1000ユーロくらいから、革の種類やウェルトによって価格が変わる。また女性ものも得意としていて700ユーロからのオーダーとなる。
店にはこれまでに研究してきたサンプルが並び、また色々細かな部分も相談に乗ってくれるから、スミズーラ初心者にも安心だろう。フィレンェで靴を誂えてみようという人は一度訪ねてみたらいかがだろう。

La calzolaia di Shoko Matsuoka
Via de’Ramaglianti 6r
50125 Firenze
tel+393388208650
mail:Shokomazuoka@me.com

松山 猛 Takeshi Matsuyama

1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。

2024

VOL.341

Spring

  1. 1
LINE
SmartNews
ビジネスの装いルール完全BOOK
星のや
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE
pagetop