ローンチグレードとなるM850iｘドライブの心臓部は、最高出力530psを誇る4.4リッターV8ツインターボで、これに最先端の4WDシステム＋８速オートマチックと各種制御システムを組み合わせた結果、０→100km／h加速3.7秒というスーパーカー級の加速性能を得ている。
サーキットでその加速を存分に試してみたところ、それはラグジュアリィクーペの域をはるかに逸脱した凶暴さであった。二千回転手前からトルクのノリは早くも最大級へと達し、一瞬アクセルペダルを踏んでいる右足の力をゆるめようかと躊躇したほど。そのまま踏み込んでいると三千回転を超えたあたりからは車体の軽さと相まって最早手が付けられないかも、と思うほどの凶暴さをむき出しにして加速を続ける。今までのM6や過去の8シリーズでは味わえなかったキャラクターである。
それにひるまずステアリングホイールを握り続ければ、最新の電子制御が4WDをみごとにコントロールし、決して凶暴さを破綻させることなく、ドライバーの思い通りに走らせ続けることができた。
BMW 8 シリーズ クーペのインテリア（写真３枚）
さすがはドイツ製の高級クーペである。激しいキャラクターをもたせながらも、申し分のないドライバビリティを提供してくれている。常に前輪の動きを正確に把握できるステアリングフィールは最新BMWに共通するライドフィールで、ここでもスポーツ性の高みを目指す姿勢を感じることができた。新型8シリーズはもはや、M850の時点でスーパースポーツの範疇に入っている。
いちだんと華やかになったダッシュボードをにやけながら眺めつつ、その高性能に思いを巡らせたときにふと頭をよぎったのは、今後登場するコンバーチブルやグランクーペといった派生モデルだけではない。
Ｍ８や、まだ見ぬＭ８コンペティションクーペを早く駆ってみたい。きっとすさまじいスーパーカーイーターとなっていることだろう。
文／西川 淳 写真／BMWジャパン 編集／iconic
