電動化、自動運転、AI……2021年の市販化を睨む「BMW Vision iNEXT」 Part.2
BMW Vision iNEXTの電動パワートレインは、前後に2基が搭載される電気モーターによって、0-100km/h加速を4秒以下で駆け抜ける一方、実に600km以上の航続距離を実現するという。フロアに敷き詰められる自社開発のリチウムイオンバッテリーは、おそらく120kWh程度の容量を持つことになるだろう。
この電動パワートレインはモジュラーユニット化されており、これ以降に登場するEV、PHEVに幅広く使われていくことになる。BMWは2025年までに電動化車両を25車種、市場に投入する予定。そのうちBEVが実に12車種を占めるとされている。
尚、この第5世代と呼ばれる自社開発の電動パワートレインは、電気モーターのレアアースフリー化が特徴と言える。レアアースはコストが嵩むだけでなく、採掘場所として筆頭にあげられる中国には安定供給のリスクがあるからだ。
またリチウムイオンバッテリーについても、主要材料であるコバルトの一大採掘地としてあげられるコンゴには、児童労働などの人道問題があり、やはりこちらも供給源としては考えられないと、話を聞いたBMW AGの開発担当役員、クラウス・フレーリッヒ氏は断言していた。尚、フレーリッヒ氏によれば「この電気モーターはミュンヘンのR&D施設で、フォーミュラE用電気モーターと同じメンバーが開発に勤しんでいますよ」とのことだ。
自動運転システムは、前述の通り高速道路でのレベル3に対応する。「技術的にはレベル4、レベル5もすでに視野に入っています。あとは規制の問題です」とは、前出のフレーリッヒ氏の言葉である。このシステムもやはりモジュラー化されており、将来はすべてのモデルに展開される。「この分野は技術の進化、開発のスピードがとにかく速いんです。ですのでモジュラー化によって集中的な開発を行なうことは必須となります」とのことである。
一方、Boostモードでは自らステアリングを握ることもできる。その走りはi3などでも披露したように「典型的なBMW」に仕上がっているという。
更に興味を引くのは、ドライバーの運転性向を把握し、自動運転時にもAIによってそれに倣った走りを行なうということ。車間距離の取り方、加減速のタイミング等々、人によって快適と感じるポイントは異なるだけに、それはユーザーに合わせようというわけだ。
デザイン、自動運転、電動化といった今後の自動車にとってキーとなる最先端の技術のすべてが、このVision iNEXTには詰まっている。ここで示されたものが2021年以降、量産車に続々と展開されていくことのなるのだ。それこそ、i3やi8が電動化において果たした役割と同じように。今はにわかに信じられなくても、10年後にはこれらがすべて現実のものになっているのかもしれない。
文/島下泰久 Yasuhisa Shimashita
サステナ主宰
モータージャーナリスト
2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
1972年神奈川県生まれ。燃料電池自動車や電気自動車などの先進環境技術、そして自動運転技術を中心に、走行性能、ブランド論までクルマを取り巻くあらゆる事象をカバー。自動車専門、ライフスタイル系などのwebメディアをはじめ、専門誌、一般誌、ファッション誌などの雑誌に精力的に寄稿している。また並行して講演活動、テレビ、ラジオなどへの出演も行なう。
海外モーターショー取材、海外メーカー国際試乗会へも頻繁に参加しており、年間渡航回数は20回を超える。 2011年6月発行の2011年版より、徳大寺有恒氏との共著として「間違いだらけのクルマ選び」の執筆に加わる。2016年版より単独での執筆になり今に至る。最新刊は「2018年版 間違いだらけのクルマ選び」。
2016年にサステナをオープン。主筆として一般自動車専門誌、webサイトとは違った角度から、未来のクルマと社会を考察中。
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まっすぐおもう、未来のコト。 モータージャーナリスト島下泰久氏が主宰を務める、「クルマが目指す未来」を主軸に先進環境技術やそれを取り巻く社会の変化など、あらゆる事象を追うウェブメディア。