英国本社工場を取材してわかった、高級車ベントレーの「非効率」な生産ラインとは?

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職人が心を込めて作業する様子(写真2枚)

ベンテイガの場合で、1台につき12?13頭分の雄牛の革が使われるレザーパーツも同様で、1枚ずつ肉眼で品質がチェックされ、レーザーでカッティングされたのち、手作業で貼り込まれていく。ステアリングホイールに革を巻き付け、ステッチを縫い上げるのにかかる時間は、1本当たり3時間半から4時間。つまり1人の職人の手から、1日に2台分程度しか生み出せないのだが、それでも手作業を貫くのがベントレーの流儀なのである。

ひとしきり見学した後にクルー工場内のスタジオで話を聞いた、ベンテイガのエクステリアなどを手掛けた同社デザイナーのJ.P.グレゴリー氏によれば、デザイン部門が生産部門と同じ敷地内にある、その距離の近さがベントレーの特徴だという。生産工程の最後まで見通すことができるのは、クオリティを追求していく上でメリットが大きく、更に言えば、デザイナーとしての歓びがそこにはあるということだった。

歴代モデルの重厚なフロントグリルの展示
歴代モデルの重厚なフロントグリルの展示。クルマの象徴として欧州では重要視されているグリルデザインの変遷からもベントレーの長い歴史、栄光が垣間見える。

クルー工場を訪問するたび、ここで働く人たちの表情が歓びに満ち、プライドを抱いていることを節々から感じていた。工場に3世代に渡って働いているメンバーも居るというのは、それを端的に示していると言えるだろう。ちなみに前出のオドリスコル氏も、ご自身とご子息、そして奥様方の祖父という3世代がここで働いているのだそうだ。

生産されたすべてのベントレーは600項目のインスペクションを受け、ロードテスト、耐候性テスト、塗装チェックが行なわれる。最終チェックを受けて、ようやく世界のユーザーの許へと届けられるのである。



文/島下泰久 写真/ベントレージャパン 編集/iconic

使用する素材を選ぶのも人なら、一つ一つを丹念に制作するのも人。熟練工による職人技が必要な作業ばかりで徒弟制度が今も受け継がれている。

使用する素材を選ぶのも人なら、一つ一つを丹念に制作するのも人。熟練工による職人技が必要な作業ばかりで徒弟制度が今も受け継がれている。

ベントレーのこだわりの一つがウッド素材。木材の種類や原産国ごとにまとめられ、保管状態にもこだわった専用の部屋にストックされている。

ベントレーのこだわりの一つがウッド素材。木材の種類や原産国ごとにまとめられ、保管状態にもこだわった専用の部屋にストックされている。

使用される木材はウォールナットが基本。製法は高級家具と同じもので、希少な幹の部分はアルナージの真材に使われる。

使用される木材はウォールナットが基本。製法は高級家具と同じもので、希少な幹の部分はアルナージの真材に使われる。

レザーを使った各部分も一部は機械を使用するが、ミシンなど操作するのは人間。細かい作業ひとつひとつに職人の心が込められている。

レザーを使った各部分も一部は機械を使用するが、ミシンなど操作するのは人間。細かい作業ひとつひとつに職人の心が込められている。

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