ポルシェの電動化戦略 Part.1「建設中のミッションE工場を見学」

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近年のポルシェが特に力を入れ、巨額の投資を行なっているのが電動化、デジタル化、コネクティビティという領域だ。筆者が出席した、2017年の業績について報告する年次記者会見の席でポルシェAG取締役会会長のオリバー・ブルーメ氏がそう話した時には「何とスポーツカーブランドらしからぬ」と思わなかったわけではない。しかしながら、これらをスポーツカーの伝統と融合させ、独自のポジションを築いていくというポルシェが打ち出す将来へ向けたビジョンが、きわめて野心的で、興味を惹くものであることも、また事実である。

その核となるのは、やはり電動化だ。実際、ポルシェは2022年までにE-モビリティの分野に60億ユーロを超える投資を表明している。昨年の売上高が235億ユーロ、営業利益が41億ユーロだと考えれば、その額の大きさが解るはずだ。

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ミッション-Eは、その象徴と言える存在である。2015年のフランクフルト モーターショーでお披露目されたこの100%電気自動車のポルシェは単なるコンセプトカーではなく、現在2019年の正式デビューに向けて急ピッチで開発が進められている。しかも、このプロジェクトは通常の新型車の開発とは異なり、生産施設の建設も同時進行で行なわれるという、きわめてチャレンジングなものとなっている。

ポルシェミュージアムにて行なわれた年次記者会見の後、ツッフェンハウゼン工場敷地内のミッション-E工場建設現場を見学した。このプロジェクトで特筆すべきは、拡張を続けてきたとは言え、たとえばライプツィヒ工場などに較べれば絶対的に広くはない敷地の中、しかも911をはじめとするスポーツカーの生産を止めることなく継続しながら新しい工場を建てるということである。これは、真っ更な土地に工場を建てるのとは、まったく異なる話だ。

再編される工場では、ボディ生産工程がミッションEと911で共用される。ファイナルアセンブリー工場はミッションE専用。敷地に限りがあるため、何と5階建ての建屋となる。こちらは自動化が大幅に推進され、また工程のフレキシブル化のために車両はコンベアによるラインではなく1台ずつ自動運転で高さも自在に変えられる台車に載せられて流される。生産されるクルマだけでなく、工場自体も最新鋭のものが用意されるわけである。

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生産は当面、年2万台程度が見込まれそうだという。キャパシティ自体は4万台まで見据えているそうだ。ポルシェ自身はそうは言わないが、世間が最大のライバルと見ているテスラ モデルSが、すでに年間5万台以上を販売していることを考えれば、もはやそれでは足りないのではないかとも思えるが、ポルシェとしてはやはりE-モビリティへのシフトの象徴であるミッションEを、まずはお膝元でしっかり作り込むことで品質を確保し、ノウハウを蓄積していきたいのだろう。将来的には、EV化を初めから念頭に置いた新しい車体設計をアウディと共同で行なうという次期型マカンなどによって、ライプツィヒ工場も活用されていくことになる。

Part.2へ続く

文/島下泰久 Yasuhisa Shimashita

サステナ主宰
モータージャーナリスト
2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

1972年神奈川県生まれ。燃料電池自動車や電気自動車などの先進環境技術、そして自動運転技術を中心に、走行性能、ブランド論までクルマを取り巻くあらゆる事象をカバー。自動車専門、ライフスタイル系などのwebメディアをはじめ、専門誌、一般誌、ファッション誌などの雑誌に精力的に寄稿している。また並行して講演活動、テレビ、ラジオなどへの出演も行なう。
海外モーターショー取材、海外メーカー国際試乗会へも頻繁に参加しており、年間渡航回数は20回を超える。 2011年6月発行の2011年版より、徳大寺有恒氏との共著として「間違いだらけのクルマ選び」の執筆に加わる。2016年版より単独での執筆になり今に至る。最新刊は「2018年版 間違いだらけのクルマ選び」。
2016年にサステナをオープン。主筆として一般自動車専門誌、webサイトとは違った角度から、未来のクルマと社会を考察中。

サステナ(SUSTAINA)とは?

まっすぐおもう、未来のコト。 モータージャーナリスト島下泰久氏が主宰を務める、「クルマが目指す未来」を主軸に先進環境技術やそれを取り巻く社会の変化など、あらゆる事象を追うウェブメディア。

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