都心の品格あるショップと見紛う、ウッディな内装による落ち着いた空間。明治の頃に、日本海を眼の前にする港町に誕生した店だ。雪国でも耐える桐下駄の製造販売から始まり、現在では「オールデン」など世界有数のブランドが揃う、知る人ぞ知る靴の名店となった。

今月のいいお店(ショップ)
新潟 – なとりや

教えてくれる人
ファッションジャーナリスト
矢部克已さん
メンズファッション誌編集部を経て渡伊。本国の服飾文化を吸収して帰国。ピッティ・ウォモを欠かさずに取材。常に「ファッションの現場」が気になるいま、この連載に力を込める。
別注の靴を求めて東京や県外からも訪れる明治からの老舗
直江津に佇む「オールデン」「ジョン ロブ」の正規取扱店
JR直江津駅から徒歩で向かった。すでに廃墟となったメンズショップや、昭和の面影を残す洋食店が建ち並ぶ。少々寂しい通りを抜けると、忽然と立派な店が見えてきた。スリーピースに帽を被った紳士が出迎える。「なとりや」3代目の内藤惣次会長である。
【歴史】
「なとりや」は、明治40年の創業。第二次世界大戦頃まで、桐下駄の製造販売を営んできた。石炭業も盛んだった港町の直江津は、古くから海運業も絶好調。大正?昭和と、懐が豊かな地元の旦那衆に桐下駄は愛されてきたのである。昭和40年あたりになると、桐下駄から運動靴やゴム長靴の販売へと変化した。