大幅に進化したオンロードの走り

そして、2007年に3世代目となるJK型が登場する。トピックはこれまでのラングラーのウィークポイントを払拭したものばかり。ボディサイズは一気に拡大され、全長は4185mmにストレッチ。特に全幅は1880mmと140mmもワイドとなった。そして最大のトピックは、ホイールベースをストレッチし、全長4705mmとした5ドアモデル、アンリミテッドを追加したこと。いずれも、道なき道を進むためにはコンパクトかつシェープされたフォルムを必須としてきたラングラー(ジープ)ゆえに、大変革といえる内容となっていた。
ハードウェア的にはラダーフレーム構造、前後リジッドサスペンション、ローレンジ付パートタイム式4WDを継承しつつも、オンロードにおける快適性、安定性、操縦性、すべてにおいて大きく進化させていた。初めてステアリングを握った際に特に高速走行時の直進安定性と快適性に感激し、真っすぐ走る! と思わず言葉にしたこと、そして、100km/h時に助手席の人と大声を出さずに会話できたことが、強く印象に残っている。
マイナーチェンジで先にグランドチェロキーに搭載されていた3.6リッターV6、メルセデス・ベンツの初代Mクラスに採用されていた5速ATトランスミッションを搭載し、その走りに大きくブラッシュアップさせ、快適なだけではなく、ジェントルなテイストまで手に入れていた。
3世代目となるJK型のディティールをチェック(写真3枚)
敬遠する理由がなくなった!
大柄になったこと、5ドアモデルの追加、快適になった乗り味などによって、これまでラングラーを敬遠していた人たちがこぞってユーザーとなり、販売台数はそれまでの2世代を大きく上回った。
そしてジープそのものの販売台数を牽引するポジションになっていた。ただ、5ドアであってもリアシートの居住性はシートサイズ、足下スペース含め、初めてラングラーに触れる人にとっては物足りなさを感じただろうし、リアシートへの乗降性はドアサイズを含めて「とりあえずリアシートとリアドアを用意してみましたが、いかがでしょうか」といったレベル。不足はないのだが、あと少しどうにかして欲しいという部分があちこちにあったのの事実だ。
しかし、それらのウィークポイントは現在発売されている現行型(4代目)ではしっかりと改善されている。ラングラーは、いつの世代も、旧世代のウィークポイントを払拭する、そんな改良が行われており、そんなスタンスに惚れ込み、ラングラーに乗り続ける人が多い。
さて肝心なオフロード走破性は、これだけの快適性を得ていること、ボディサイズが大柄になったことで、かなりスポイルされたのだろうと思われたかもしれないが、その逆。つまり、走破性を大きく高めている。先ほど紹介したようにハードウェア的(形式など)は、2世代目のYJ型と変わらないが、トレッドを大きく広げてサスペンションストローク量も大きく確保したこと、大径タイヤの採用、トルクフルなV6エンジン(前期は3.8リッター/後期は3.6リッター)により、不整地でもボディをヒットさせることなく、自在にサスペンションを伸び縮みさせてハードなシーンもクリアしていってしまう。
その走りに大きく貢献したのが、トラクションコントロールの存在だ。オフロード走行において大切なのは、サーキット走行と同様、路面にいかにタイヤを接地させてトラクションを伝えられるか。オフロードにおけるトラクションコントロールは、タイヤが浮いて(グリップを失って)も、それをフォローしてくれる制御であり、それが加わることでベースポテンシャルを大きく越える走破性を期待できる。そもそもラングラーはハードウェアレベルでかなりの走破性をもっていた上に、制御によるフォローを加えたことにより、まさにとんでもない走破性を身につけた。