日本一の老舗シューケアメーカー「コロンブス」の全面協力、Begin & MEN’S EX特別編集で好評発売中の書籍『究極の靴磨き』から、その中身をピックアップしてご紹介する。今回は巻末の「デザイン別 磨きがいのある究極の靴カタログ10選」より、コルテの美しい一足を取り上げよう。
コルテ コルテ-アルカ
PRODUCT CORTHAY CORTHAY ARCA
MATERIAL CALF
PRICE 19万5000円
MADE IN FRANCE
ビスポーク職人の矜持が詰まった
ツーアイレットという構造
紳士靴におけるエレガントの条件は明快だ。エレガントを追求すればミニマルにたどり着く。ステッチ、パーツ、そしてアイレットでさえも少ないことが良しとされる。シューレースを幾重にも交差させたアイレットの縦列は砂埃の中を行進する男たちを想起させる。
掲載ブランドで唯一創業者が存命のコルテは、ブルーチャー、すなわち外羽根の構造を、たった二つのアイレットで完成させた。
ベグデーグル(鷲のくちばし)というネーミングの上手さに舌を巻く、美しいトゥシェイプが際立つ小ぶりなレースステイ。このパーツの面積が小さくなれば当然、ホールド力は落ちる。これをカバーするためには木型の精度を上げる必要がある。ビスポーク職人、ピエール・コルテ氏だから成立したデザインであり、コルテ-アルカと名付けられたそのモデルが名作に名を連ねることができたのは、ツーアイレットの不利を物ともしない履き心地を実現したからに他ならない。
もちろん、取り揃えている革もA5クラスだ。ファクトリーというよりもアトリエと呼んだ方がしっくりくるプレタポルテの製造現場に積み上げられた革は、ビスポークのそれと比べても遜色ない。
1990年にパリで創業したピエール・コルテ氏は16歳でコンパニオン・ドゥ・デュボワールの門を叩いた。このコンパニオンは非常に厳しい指導で知られる、職人のための職人による教育機関である。ここで製靴技術のイロハを学んだピエール氏はジョンロブ、ベルルッティで存分に活躍して独立を果たした。いわば、エリート中のエリート。ブルネイ国王は青田買いよろしくピエール氏がアトリエを構えると早々に150足(!)もの注文を入れたそうだ。そんな男にとってツーアイレットというお題は造作もないものだったに違いない。
付け加えるならば、この靴種はVフロントと呼ばれる末広がりのレースステイがポピュラーだが、ピエール氏は水平に切り取った。並べてみればぐっとモダンな印象が加速しているのがわかる。コルテ-アルカにはパリのビスポークブランドのみに備わる美学が息づいている。
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―INDEX―
ChapterⅠ 頻度に応じた靴磨き
おろしたての靴磨き/履き終わりの靴磨き/週に1度の靴磨き/月に1度の靴磨き/半年に1度の靴磨き
ChapterⅡ 短時間でできる靴磨き
1分で光らせる/5分でツヤを出す/30分で鏡面磨きを完成させる
ChapterⅢ 上級者向けの磨きを極める
立体感を出す磨きを極める/アンティーク磨きを極める
ChapterⅣ トラブル対策
キズ編/カビ編/塩吹き編/クレーター編/シミ編
ChapterⅤ 磨きがいのある デザイン別 究極の靴カタログ10選
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