リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネ。そこには日々、厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学が宿っている。
Profile
アウディ ジャパン販売 代表取締役社長
斎藤 徹氏
1960年生まれ。東京都出身。’82年に慶応義塾大学経済学部を卒業し、日産自動車に入社。主に海外事業部門でキャリアを積み、日産ロシア社長、日産ヨーロッパ上級副社長などを歴任。アウディ ジャパンの代表取締役社長を経て、’18年9月より現職。
メガネに求めるのは機能か、それとも外見上の美しさか
アウディの直営ディーラーを運営するアウディ ジャパン販売の代表取締役社長として、アウディ車の拡販に尽力する斎藤 徹氏は、知的なメガネ姿のリーダーである。
現在、愛用しているメガネはアラン ミクリのもの。同ブランドは、審美性と機能性を調和させることでメガネをファッションアイテムへと押し上げた立役者だが、氏が惹かれたのは、そのデザインに宿る「機能美」。実物をしげしげと眺めながらこう切り出した。
「このメガネ、中央のブリッジがレンズより前に張り出しているんです。私はメガネの専門家ではないので、詳しいことまではわかりませんが、恐らくレンズを衝撃から守るための工夫ではないでしょうか。デザインが洗練されているので、一見、そうとはわからないところが洒落ています」
機能性とデザイン性の両立は、プロダクトデザイン全般における普遍的なテーマだ。繊細なディテールに着目するのは、自動車というプロダクトに30年以上も向き合ってきた斎藤氏だからこそかもしれない。その感想を率直に伝えると、氏はこんな話をしてくれた。
「例えば、Audi A5の長いボンネットは力強さを表現しています。しかも、単に長いのではない。ボンネットに先鋭的なラインを刻み、その下に高性能エンジンが収められていることを示している。こうした視覚的にも美しく感じられる形態を取りつつ機能を犠牲にしないのが重要で、これこそがまさにアウディの哲学。つまり、目立つことや飾り立てることを目的とせず、理詰めでありながら感性に訴えかけていくのです。だからかもしれません、このメガネに私の手がおのずと伸びたのは」
そう述べる斎藤氏だが、かつて、Audi Q2の発表会で登壇した際は大冒険。太く存在感のあるフレームのメガネを掛けたという。
「Q2は若々しいクルマなので、そのカジュアルな雰囲気を表現しようとしたんです。もともと目立ちたいと思っていないコンサバティブな人間からすると、正直、太いフレームに抵抗感を覚えなかったわけではありません。が、新製品の世界観を体現するのも私の務めですし、何より大勢の前でプレゼンテーションする際はやはり相手の記憶に残らなければいけない。自分なりのポリシーを持ちつつ、時に戦略的にメガネを活用することは必要なのかもしれませんね」