走破性はいうまでもなくハイレベル

オフロード走破性は、ヘビーデューティモデルを語るにふさわしいポテンシャルが与えられていた。従来のヘビーデューティグレードでは、ローレンジ付きのパートタイム4WDが主流となっていたが、4WDモード前後の回転差を吸収できるモードがないため、オンロードでの低速域ではコーナリングの際にギクシャクとした動きが発生してしまっていた。新型トライトンではパジェロに採用されていたスーパーセレクト4WDを搭載し、4WD(ハイレンジ)にセンターデフを備えたモードを加えて日常でも4WDによる安定感と安心感を提供。つまり、オンロードでの雨や風が強いシーンでも、4WDを積極的に活用できるようになり、安定性と安心感を高めている。
走破性の面では、フロントサスペンションはストロークを大きく確保できるレイアウトを採用したダブルウィッシュボーン式、リアには荷台の荷重変化に広く対応できるリーフスプリングを採用するが、オンロード性能を確保しながら、オフ走破性を狙ったセッティングに絶妙さを感じた。凹凸の大きなモーグル地形では、タイヤが外れるのではないかと思えるぐらいまでサスペンションを伸ばして、路面にタイヤを接地させてくれる。結果、ドライビングしていても、ボディは水平に近いスタンスを保ってくれているため乗員は安心だと感じるし、タイヤを路面に接地させているから走破性も期待できる。
タイヤが届かぬような地形ではブレーキ制御ほかを活用したトラクションコントロールが介入して空転輪を止めてクルマを前進させていく。その加減はドライブモードと呼ばれる7モードから選択できるようになっているが、ノーマルモードのままでも素性のよさも手伝って、多少の走破テクニックを加えることで走破してしまう。実際、2023年秋に開催された北海道にある三菱のオフロードテストコースでもノーマルモードのままで走り切ってしまったし、今回も、あえてハード走破性を要求するラインをドライバーが選ばない限り、ノーマルモードで走破できてしまったほどだ。この手のモードは、切り替えどころでその差が分かりにくいことが多いのだが、新型の場合は違いがしっかりと作り込まれており、クロスカントリーランに慣れていない人でも、安心して走破できる実力を備えていることを感じた。
走破性をさらに引き上げる装置としてリアデフロックを設定。まさに、リアのデフをロックさせてしまう装置で、かなりの極悪路でも無理やりのように突き進んでいってしまう。ゆえに、最初から活用するのではなく、前後に進むことができなくなった時、たとえば、砂浜での大スタックや、ボディを傷つけてしまうほどのシーンなど、最終手段として活用する装置として捉えておいたほうがいい。

最初に、このボディサイズとスタイリングは乗る人を選ぶと書いたが、それらを、駐車場を含めて、どうにかなるさ、と前向きに考えられるスタンスを持っている人ならば、このタイミングで、ぜひオススメしたいモデルだ。
取り回しは思っているほど気をつかわなくていいし、シートは5名分用意されているし、荷台の雨風をしのぐならばベッドカバーをすればいいだけのこと。街中でも映えるスタイリッシュさにあふれているデザインもいいし、かつてのブームを経験していない世代から見ると、斬新かつ新鮮さを感じられるとか。運転支援機能も標準装備しているし、なによりも、クルマとしての操る愉しさにあふれており、安心感もすこぶる高い。新型トライトンは日常も非日常も愉しくしてくれる魅力にあふれている。
文=吉田直志 写真=三菱自動車 編集=iconic