乗り心地と扱いやすさは想像以上
2024年2月、三菱の1トン ピックアップトラック「新型トライトン」が日本市場へ導入された。かつては日本で生産が行われていたが、その生産をタイへと移管し、先代はアセアンやオセアニアを中心に約150ヶ国に年間20万台を販売。まさに、三菱の屋台骨を支える基幹車種となっている。
ピックアップトラックゆえにその主たる目的は実用車、つまり、働くクルマであり、さまざまな作業に特化したポテンシャルをアドバンテージとしているが、仕向け地によってはその利便性が重宝され、人を乗せてかつ荷物を載せて移動する特別なモデルとしても活躍をしているとか。そんな使われ方を反映するべく、新型モデルは、ハードウェアのすべてを一新し、フレームから作り直したのだという。
日本仕様はドアを片側2枚ずつ持ったダブルキャブ+ベッドというパッケージングのみで、ボディサイズは全長5360mm、全幅1930mm、全高1815mm(いずれもGSR)となる。車庫証明を取るには一般的な月極めでは少々難しいサイズとなるし、ルーフのないベッド(荷台)に積み込むアイテムを選ぶことになる。しかし、それ以外の面ではピックアップトラックだから…とネガティブに捉えられてしまいそうな部分(たとえば、取り回し、リアシートの居住性、エンジンフィール)などは、十二分だと感じさせる性能が作り込まれている。
取り回しにおいて、これまでのピックアップトラックはリアタイヤの位置がつかみづらく、また、テンポ遅れもあって「後から付いてくる」ような印象があり、かなり気をつかった。しかし、新型ではリアタイヤの位置を把握しやすいことはもちろん、最小回転半径が小さくなったこともあって、ピックアップトラックをドライビングしているという「違和感」が見当たらない。もちろん、周囲を見渡せるマルチアラウンドモニターを備えていること、電動パワーステアリングの採用やクイックに仕立てられたステアリングギア比もあってのことだが、想像以上に扱いやすいと感じ取れる。
ラダーフレームを別体とした構造は牽引能力や路面からの入力をいなすといったヘビーデューティ性能を引き出すのに有効だが、それに対応させようとするとフレーム重量が増えてしまうというデメリットを持つ。さらに、ボディ部とは、ブッシュを介してつなぐために、シャシーとの一体感を生み出しにくい、つまりハンドリングに曖昧さを与えてしまうというマイナス面もある。ところが新型のハンドリングは、技術革新により強固でありながら軽量化を図ったフレーム、さらにいい加減さではなく、緩さに通じる曖昧さにとどめるといったチューニングにより、初めてピックアップトラックに乗った人でも違和感を覚えさせないレベルに抑え込んでいる。そして、先に述べた素のよさに加えて、そこにブレーキ制御を巧みに用いたAYC(アクティブヨーコントロール)のアシストもあって、意のままのハンドリングを愉しめるように仕立てられており、ピックアップトラックであるのにステアリングを切り込みながら走るワインディングに、愉しさがあふれている。
新開発となった2.4リッター ディーゼルターボエンジンは2ステージターボチャージャーを組み合わせることで、低回転域から高回転域まで伸びやかな加速感と、十二分といえるフラットトルクを発生。つまり、日常での発進加速はもちろん、高速走行時の加速まで、オールマイティな期待に応えてくれるポテンシャルを持っている。
乗り心地についても不足がない。ベッドに荷物を積み込んだ状態、つまり、リアサスペンションが沈み込んだ状態での走行を通常とするピックアップトラックにとって、ベッドに荷物を積まぬ状態で走ろうものならば、それこそリアでは跳ねるような挙動となり、リアシートに座った人は突き上げ手前の乗り味に見舞われることとなる。ところが、新型トライトンでは空荷の状態であっても、リアサスペンションは路面からの入力によってグッと縮められ、その後、スーッとストレスなく伸びていくフィーリングが作り込まれており、結果、乗員に不快感を伝えてこない。ラダーフレーム+ボディ別体というヘビーデューティモデルをむしろ好んできた者としては、トライトン開発者に対して、そこまでやりますか? といった印象を抱いてしまったほどで、ラダーフレーム+ボディ別体モデルとしてはトップクラスと断言してもいい。パッケージングやボディサイズはさておき、これらが、日常における快適性について不足がない「乗用車的だ」と断言できる理由だ。