イタリア中部トスカーナ州の海沿いに位置するボルゲリ。この地で1985年から最上級の赤ワインを造り出しているのが「オルネッライア」だ。ここ数年のヴィンテージについてはMEN’S EXでもご紹介してきた。
・年末年始の食卓に「オルネッライア」という贅沢を
・ワインとアートが共鳴しあうオルネッライアの哲学とは?
オルネッライアはカベルネ・ソーヴィニョン、メルローといった、いわゆるフランスのボルドー品種のブドウを用いているのが特徴だ。地元品種を用いないスタイルは「スーパー・タスカン」とも呼ばれていたが、今や、そのスタイルを確固たるものにしている。
オルネッライアの味わいの根底にあるのはその秀逸なテロワールだ。海岸から10キロ以上離れた丘陵地帯の麓にブドウ畑が広がり、その土壌には砂利や粘土、石灰などが入り混じる。オルネッライアでは、各土壌に応じたブドウを植えているのが特徴だ。さらに、夏は気温が高く乾燥しがちな地中海性気候もブドウが育つには理想的な環境といえる。
恵まれたテロワールが生み出す最上のブドウを使って造り出されるオルネッライアだが、その新たなる楽しみ方として、「和食」とのペアリングがある。料理を提案してくれるのは、17年連続ミシュラン三つ星を獲得している和食の最高峰「日本料理 かんだ」の神田裕行さんだ。
パリでも修業をしていたことがある神田さんは常日頃からワイン、赤ワインと和食のペアリングをお店でも行ってきたというが、オルネッライアは特別だという。「オルネッライアのサードワインであるレ・ヴォルテは父が大好きなデイリーワインだったのです」と語り、その思い入れは格別なのだとか。今回の特別テイスティングには3つのヴィンテージのオルネッライアが用意された。
コクのある赤ワインと、繊細な出汁や醤油、刺身といった個性のある食材をどのように合わせるのか、それぞれのヴィテージのキャラクターを的確に感じ取り、そのニュアンスを食材にもさりげなく取り入れて合わせるところがまさに神田マジックだ。
例えば、2011年に合わせたいと用意された「カワハギのお造り」。「2011年ヴィンテージで感じた胡椒っぽさ、スパイスのニュアンスに合わせて、カワハギにはカワハギの肝と7年熟成の新潟産のかんずりをのせています」と神田さん。シルキーでボリューム感のある2011だが、確かにその豊かな果実味の中に、スパイシーさ、青っぽさ、唐辛子のニュアンスを感じさせる。カワハギのお造りにのったかんずりのスパイシーさが見事にリンクしているのだ。
白トリュフをのせたカマトロのお寿司には、2010年を合わせて。すっと溶けて鼻に抜ける綺麗な脂の入ったカマトロに白トリュフの豊満な香りが合わさったお寿司。その豊かな香りを野性味とエレガンスを極めたかのような2010年ヴィンテージが堂々と受け止めてくれる。
炭火で焼いた黒舞茸は、香ばしくジューシーさも感じさせる。神田さんがおすすめするのは2020だ。どこかウッディな雰囲気と早熟でヴァニラのようなニュアンスを感じさせる2020は、バターや炭の味わいに満ちた舞茸と調和する。
そのほかのペアリング(画像4枚)
赤ワインと和食とのマリアージュは確かに難しい。果実味とタンニンがしっかりとした堂々たるフルボディの赤ワインならなおさらだろう。だが、ワインが持つニュアンスを丁寧に紐解き、和食にそれと共通するエッセンスを加えることで、見事な調和が生まれるのも事実だ。
ちょっとした味わいの工夫や素材の選び方で、和食と赤ワインとの楽しみ方はぐっと広がる。三つ星シェフである神田さんの達人芸とオルネッライアの懐の深さ、ワインとしての完成度の高さを感じさせるペアリング。赤ワイン、オルネッライアの新たなる楽しみ方の扉が開いた瞬間でもあった。
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