伝統と革新。一見相反するように見える二つのテーマは、ものづくりの世界で、常に口にされてきた。いまの選択は未来をつくる第一歩。伝統の中から何を選び、自分自身の表現にしてゆくか、そんな切り口で考えれば、それは二律背反ではなく、実は同じことを指しているとも言えるのかもしれない。11月、それぞれの世界で、革新的なアプローチで新たな伝統を生み出そうとしているつくり手、3人が集まってのイベントが行われた。
会場はブルガリタワー内のイタリアンレストラン「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」。ルカシェフが率いるこちらの店は、イタリアのミシュランガイド的存在「ガンベロロッソ」で三つ星同様、最高評価の3フォーク、2019年には世界中のイタリア料理店から一店だけ選ばれる「今年の店」にも選ばれた、イタリア料理の名店だ。
2日間限定で行われたコラボレーションに加わったのが、「世界の名物 日本料理」として、茶の湯の文化を日本料理と融合した湯木貞一氏の流れをくむ「京都吉兆」3代目の徳岡邦夫氏、イタリアの最高級スパークリングワイン、フランチャコルタの雄「カ・デル・ボスコ」の創業者、マウリツィオ・ザネッラ氏。ルカ氏と徳岡氏の料理に、マウリツィオ氏のワインを合わせるという特別な食体験が、ラグジュアリーを熟知するゲストたちに提供された。
イタリア料理、日本料理、ワインづくり。そんな3つの世界のトップランナーが集い行われた当イベントにて、個々のトップたちが考える「伝統と革新」について話を聞いた。