最後の自然吸気エンジンを積んだ、その名もグラントゥーリズモ

2007年にはその名もグラントゥーリズモと命名した4座のクーペモデルが発表され、続いてオープントップ仕様のグランカブリオがデビューした。このグラントゥーリズモはA6 1500からスタートしたマセラティのメインストリームである“グラントゥーリズモ”カテゴリーの集大成ともいえるモデルであった。このモデルはその少し前に発表された5代目クアトロポルテと共に、久方ぶりにピニンファリーナによるデザインが採用されている。アグレッシブかつ、優雅なグラントゥーリズモのボディスタイルはタイムレスな魅力を持ち、結果的に15年間にわたる長いライフスタイルをまっとうすることとなった。
グラントゥーリズモのディテールをチェック(画像3枚)
グラントゥーリズモは大人4名が座ることのできる充分なスペースを持ち、かつ比較的コンパクトにまとめられた。その高い実用性も高く評価された。また、パワートレインもフェラーリとの共同開発によるM139(4.2~4.7リッターV8)が搭載された。このエンジンはマセラティにおける最後の自然吸気エンジンとなり、そのナチュラルなフィーリングを持ち、抑揚の効いた力強いエグゾーストノートはまさにマセラティサウンドの典型と褒め称えられた。

そして、このグラントゥーリズモの最終ロットがラインオフしてから2年が経過した2022年、マセラティにとって全く新しい時代の幕開けともなるべくその後継モデルの存在が明らかにされたのであった。(続く)
越湖信一
モデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職のレコード会社ディレクター時代から、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete GuideⅡ』などがある。
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文=越湖信一(EKKO PROJECT) 写真=ピニンファリーナ、マセラティ 構成=iconic