“世界の主要ホールの95%以上のステージで選ばれ続けているピアノ”と称されるほど、ピアニストから絶大な信頼を得ているスタインウェイ。ドイツにルーツを持ち、19世紀半ばにスタインウェイ一家がアメリカ・ニューヨークに移住して創業したのがその始まりだ。現在でも世界中のトップピアニストに愛用されている名器である。
長年にわたり、これほどの卓越した地位を維持している理由は、スタインウェイのピアノが生み出す比類なき響きと美しい音色にほかならない。最高品質の素材、伝統的な製法、そして職人技に裏打ちされたその音は唯一無二の存在なのだ。
そんな伝統を守り続けてきたスタインウェイから2018年、80年振りの新作が誕生した。それが、ハイレゾリューション自動演奏ピアノ「スタインウェイ&サンズSPIRIO(スピリオ)」(1813万円~)だ。80年間にわたり、新製品が生まれていなかったことにも驚くだが、その久々の新製品が現代の最新テクノロジーと融合した全く新しいピアノであったことも驚きであった。
これまで演奏家のためのものであったスタインウェイのピアノを、ピアノを弾かない人でも“本物の音”を自宅で楽しんでもらえるような存在にしたいという思いのもと、誕生したのが「スタインウェイ&サンズSPIRIO」。 “自動演奏”と聞くと、ただ録音した音がピアノから流れるだけ(鍵盤は演奏に合わせてうごくだけ)と思われるかもしれない。
だが、「スタインウェイ&サンズSPIRIO」の演奏を実際に聴いてみると全くそうではないことが分かる。搭載するのは独自開発したハイレゾ再生システム。そして、名演を再現するための演奏データとなるのは、スタインウェイを使って収録されたスタインウェイ・アーティストたちの演奏。ラン・ランやユジャ・ワンといった現代のピアニストから、ホロヴィッツやグレン・グールド、ビル・エヴァンスといった「不滅の巨匠」による歴史的名演奏も含まれる。
特筆すべきは、鍵盤やペダルの繊細なタッチをアーティスト一人一人の演奏に合わせて、一つ一つ再現しているところだ。流れる音楽に合わせてピアノの動きを見ていると、あたかもその場でアーティストが実際に演奏しているかのような錯覚に陥る。
最新のテクノロジーを使い演奏家のタッチを精密に再現――。さながら目の前で演奏家がピアノを奏でているかのような、演奏家の身振りや息遣い、感情までもが伝わってくるかのような感動を味わえる。
今は亡き巨匠たちの演奏の完全再現を叶えたのは独自のオーディオ変換ソフトウェアのおかげだ。付属のiPadにはバッハからベートーヴェン、ビリー・ジョエルに至るまでクラシックからジャズ、ポップスまで4700曲以上の演奏が収められており、動画が残る作品に関しては、演奏に合わせて動画も再生される。収録される音源のリストを眺めているだけでもワクワクするようなラインアップも魅力のひとつだ。しかも、収録曲は毎月更新されて増えていくというのも嬉しい点。