鴨志田 そのとおりです。ラルフ ローレンが走りで、映画『炎のランナー』が公開された’81年ごろが人気のピークでした。当時からP.Sは英国やイタリアのファクトリーで生産したアイテムを中心に、アメリカ製やカナダ製のスーツなどを揃えていました。私は「アメリカン・グラマラス」と表現しているのですが、伝統のアメトラに比べてよりセクシーで魅惑的な男性像を感じさせるコレクションでしたね。ヨーロッパで流行していたビットローファーやレイヤードルックを取り入れたスタイルは、P.Sのお家芸でした。
M.E. それはお洒落!
鴨志田 フランスやイタリアは流行の最先端を発信する国でしたが、それを巧みに取り入れたのは、世界で最も大きな富を抱え、最も消費する国であるアメリカでした。ゆえに、ヨーロッパ諸国に負けず劣らず、多くのウェルドレッサーが存在していたのも事実です。クラシックでいて堅苦しくなく、カジュアルミックスしたアングロ・アメリカンスタイルは、今も色褪せるることのない輝きを放ち続けています。’80年代後半に初めてピッティへ行き、イタリアンクラシックに衝撃を受けるわけですが、当時のイタリア人の洒落者は皆アングロ・アメリカンに影響を受けていて、やはり目の付けどころは同じなんだなと実感しました。
M.E. 鴨志田さんは現在、アングロ・アメリカンの継承者であるP.Sを牽引する立場にありますが、ディレクションにおいて何を意識していますか?
鴨志田 ブランドのDNAを継承することはもちろんですが、それを今のライフスタイルにどう溶け込ませるかを念頭に置いています。ただ、意識的にトレンドへ寄せることはせず、ポール・スチュアートらしさをマイペースに表現することに重きを置いていますね。最近はコレクションのイメージを膨らませる際に、’80年代の映画やカタログを参照して復習するようにしています。アングロ・アメリカンの源流を再訪し、そこにインスピレーションを求めるのが今、とても新鮮に感じるんですよね。
鴨志田氏が提案するアングロ・アメリカンの最新形

「今季のコレクション・テーマは『All Like A Suit』。スーツのように着こなそう、という意味合いです。カジュアルウェアも上下のカラーリングを合わせて、スーツのような感覚ですっきりと合わせる提案ですね。ブルー系で統一した左のコーディネートは、まさにそんなスタイルです。一方、右のスタイリングではポール・スチュアートの昔ながらの魅力である色の美しさ”も取り入れました」(鴨志田氏)
[MEN’S EX Summer 2022の記事を再構成]
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